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ある愛の寓話

ある愛の寓話

ある愛の寓話

作家
村山由佳
出版社
文藝春秋
発売日
2023-01-10
ISBN
9784163916439
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「ある愛の寓話」のおすすめレビュー

村山由佳氏デビュー三十年記念作品。言葉を超えて生まれた「愛」を紡いだ短編集『ある愛の寓話』

『ある愛の寓話』(村山由佳/文藝春秋)

 1993年、『天使の卵 エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞し、作家としてデビューした村山由佳氏が、今年デビュー30年を迎える。大きな節目を記念して、“原点回帰にして到達点”と謳われる短編集、『ある愛の寓話』(文藝春秋)が1月10日に刊行された。独特の切り口から展開される1話完結型の物語が、全6話収録されている。

 本書は、〈人〉と〈人ならざる者〉との交情が描かれている点が新しい。個人的には、「晴れた空の下」、「グレイ・レディ」の2話に強く惹かれた。こちらの2話は、主人公のひとり語りが全編を通して続く。語られる様々なエピソードや心情に触れるうち、その光景がありありと思い起こされ、心を丸ごと持っていかれる。「グレイ・レディ」に至っては、語り手そのものが〈人ならざる者〉で、だからこそ伝わってくる臨場感があった。

 カエルのぬいぐるみ。自分が名付け親になった愛馬。伝統工芸品として名高い、ナンタケット・バスケット。あらゆる“もの”へ向けられた真摯な愛、もしくは、“もの“が抱いてきた記憶と想い。どちらの角度か…

2023/1/31

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ある愛の寓話 / 感想・レビュー

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starbro

村山 由佳は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者デビュー30年記念作品としては、少し物足りない(頁数および内容)ですが、著者らしい短編集でした。オススメは、『同じ夢』&『訪れ』です。世間は狭いもので、著者と大学時代同じサークルだった人が、会社の同僚で私の隣に座っています(笑) https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163916439

2023/01/17

さてさて

村山由佳さんを思い浮かべる時、性愛と戦争を描く物語を避けて通ることはできません。この作品ではこの二つにプラスして”〈人〉と〈人ならざる者〉との交情”という村山さんが幼い頃から惹かれていたとおっしゃる世界に触れることで村山さんらしさ全開の物語が描かれていました。主人公たちの”人ならざる者”への強い想いに筆の力が強い説得力を与えていくこの作品。最後の短編〈訪れ〉に描かれた戦時下の物語に、これぞ村山さんを感じるこの作品。デビュー30年を迎えた村山さんの今後のご活躍にますます期待が高まるメモリアルな短編集でした。

2023/01/10

いつでも母さん

『原点回帰にして到達点。デビュー三十年記念作品』振り幅が大きいのはさすが作家さん!村山さんの作品からはいつもそんなこと思う。短編6話と作者あとがき。どれも「あぁ村山さんだ」と感じた次第。時にざわりと心の奥の雑多な感情の襞を起こし、ホロリとしたりした。読むタイミングって読書には大きな影響を与えるけれど、これは今の私にスーッと入ってきた。どれも好きだ。本当に好きだ。

2023/02/05

モルク

人とだけではない愛溢れる6話の短編。デビュー30周年記念作品。言葉が伝わらない相手でも心を通わせることはできる。慈しみ、いとおしみそして慰めを受ける。籠のバッグが語る「グレイ・レディ」が特に好き。そして後半の作品の方が人間くさく村役さんの本領を感じる。

2023/03/23

Sato19601027

NHKラジオ「新日曜名作座」で放送されると知り、読んだ6編の愛の形。この物語で語られている「愛」は、「慈しむ心」と捉えるのが、一番近いのかもしれない。愛の対象は、時として、縫いぐるみや動物に向けられたり、大事なグッズに例えられているが、身近な人への優しい眼差しを感じる短編集だ。村山由佳先生が小説家になられて30年の節目に、心を自由に遊ばせて書かれたという物語。読み進める内に、子供の頃や、初恋、失恋、楽しかったこと、苦しかったことなどが頭の中でくるくる巡る贅沢な時間。幸せな読書時間だった。

2024/04/05

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