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武蔵無常

武蔵無常

武蔵無常

作家
藤沢周
出版社
河出書房新社
発売日
2016-03-24
ISBN
9784309024561
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武蔵無常 / 感想・レビュー

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jam

観念に始まり、終わる。宮本武蔵を綴った作品はいくつもあるが、吉川英治は他と一線を画す。格調高い文章で綴られた生涯は、最期の1行に凝縮し、武蔵と共に到達した作者の平原があった。そして本作も、猛りと迷いの身悶えのなか、武蔵と作者は「無常」の境地に到った。わずか7歳の幼い生命を奪った武蔵。その刃は極限の優しさで微塵の痛みさえ与えなかったろうが、己が心に返す刃は、深い淵へと武蔵を落とす。終盤、巌流島での小次郎との決闘の後、船頭と海へ逃れ、やがて冒頭の流離う魂と化す。作者の心象具現であり、武蔵、墨染めの書であった。

2016/05/23

雪風のねこ@(=´ω`=)

お膝元の播磨なのに伝記を読むのは初めてという不届き者。禅問答に似ているのは、人を殺すことと剣を極めることの矛盾点を突き詰めているからだろう。そんな物語を読んでいると、霊体となってそのさまを眺めているかのような生々しさを感じる。時空を斬ったかのような構成は剣で斬られたかのように錯覚する。武蔵、といえば武骨で粗暴なイメージを持っていたけれど、それこそ藩の計謀の証なのだろう。豪胆なようで小心…繊細。感性が豊かで思慮深いといえる。剣を抜き放った時の、鋼が匂い立つ、という感覚は本当に感じ取っていると思うな。

2016/06/08

ちょき

形容するのも憚られるがその表現力たるや芸術の域。吉岡又七郎殺しの苦悶、愚独老師との問答を経て小次郎との決闘へと向かう武蔵。虚構と現実の情景の変わり目に翻弄される。井上雅彦氏の「バガボンド」は読んだことがないが、世界観は似ているのではないかと思った。読書力が鍛えられる。

2016/03/25

aloha0307

武蔵が佐々木小次郎と決闘するまでの数日間 剣 斬ること それ自体の意味が混濁し分からなくなってゆく...客観的事実には殆どふれず、ただただ内面の葛藤をリアルに描く(ドフトエフスキーを言及したのには驚いた)。終幕は壮絶たる混沌 勝ったのか、負けたのか...

2016/07/23

tom1969

「藤沢周」8冊目で、どんどん藤沢ワールドから自分が離されていく感じがする。今回は、武道における己の極限と己は何処に浮遊しているのかを問われたような気がしたが最後まで解らなかった。時間を開けて再読で追い付きたい。新作が出たら必ず購入する作家です。

2016/04/16

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