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夫の骨 (祥伝社文庫)

夫の骨 (祥伝社文庫)

夫の骨 (祥伝社文庫)

作家
矢樹純
出版社
祥伝社
発売日
2019-04-12
ISBN
9784396345105
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ジャンル

「夫の骨 (祥伝社文庫)」のおすすめレビュー

家族ってなんだ? 家族のきしみをとらえた9つのイヤミス物語

『夫の骨』(矢樹純/祥伝社) 久しぶりに後味の悪い小説を読んだ。少し前から「イヤミス」というジャンルの小説が人気らしい。イヤミスとは普段は表に出てくることのない人の心の奥に潜む心理を描写し、見たくないと思いながらもついつい読み進めてしまう、後味の悪いミステリー小説のことだ。  私にとって小説とは現実を忘れてその世界にはまり込む気分転換の手段である。小説にどんな役割を求めるかは人それぞれだと思うものの、小説を読んでわざわざ嫌な気持ちになる必要はないと思っている。だが、怖い物見たさで手にとってしまうのが人間だ。 『夫の骨』(矢樹純/祥伝社)は、9つの物語が収められている短編集。著者のブログで短編集のコンセプトは「家族の歪み」と「どんでん返し」と書いているとおり、最後まで読み進めると「そうだったのか!」と感じられる意外な結末がどの物語にも用意されている。

 9編の中で最もイヤミスだった物語は、本書の表題にもなっている「夫の骨」だ。ここであらすじを紹介しよう。

昨年、夫の孝之が事故死した。まるで二年前に他界した義母佳子の魂の緒に搦め捕られたように。血縁の…

2019/5/30

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夫の骨 (祥伝社文庫) / 感想・レビュー

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ろくせい@やまもとかねよし

人間の多様な利己性を冷徹な恐怖で表現する9短編。全編を通して表現する対比は「金」と「生」だが、そのうち8編の主題は家族に置かれる。家族は血縁か共に生きた経験かを問いかける。特に、母親が抱く子供への愛アガペーを用いた不貞な恋愛関係の物語が印象に残る。家族との括りは何であるか、血縁をどこまで尊重すべきか、母のアガペーに血縁は不可欠か、などを軽快なサスペンスとして描写する。いずれも突然のどんでん返しが仕掛けられ、軽快な読書となった。やはり、家族であっても、人間は所詮自己の意識の中でしか生きられないのだろうか。

2020/04/23

夢追人009

矢樹純さんの日本推理作家協会賞を受賞した家族をテーマにした全9編の傑作短編集ですよ。本書は表題作が最上の出来という事もなく読者の好みにより評価が分かれそうな全てが一級品の見事な作品ばかりですね。どんでん返しが本書の売りで、手掛かりを基に推理が可能かとは言えませんが常に読者の意表を突く予想外の結末が待っていて誰もが大満足で読み終えられるでしょうね。でも、それだけでなく家族の抱える問題が鋭く描かれていまして夫婦・姉妹・老人の痴呆という身近な題材にリアリティーがあり誰もが身につまされ明日は我が身と思うでしょう。

2022/02/27

家族モノのイヤミス系の短編集。全作どんでん返しまではいかない気がするけれど、どれも途中に想像していたオチは全て外れだったので良く出来ていると思います。表題作が1番オチも凝っていたかな。夫婦間、家族間って何かしら騙しながら平常心を貫いているものかと少々不信感が湧いてきそうになりました。

2019/11/02

しんたろー

矢樹純さん初読み。9話の短編集…亡夫が遺した幼子の骨に戸惑う未亡人、姉に劣等感を抱く妹の逆襲、娘の目を盗んで孫の窮地を救おうとする老婆、可愛い妹に嫉妬する姉の秘密、娘の受験と夫の不実に悩む主婦、隣の煩い犬を殺そうとする女管理人、失踪した養女の妹と実母の板挟みに悩む姉、シングルファザーが娘に頼まれた怪しい願い、借金を抱えた夫を殺そうとする主婦…どの話も家族への複雑な想いや疑惑を巧みに描き、最後に引っ繰り返す手法が効いていた。ゾッとする本音や切ない心情も上手いし、長編も読みたいと思わせる筆力高い作家さんだ。

2019/09/20

美紀ちゃん

夫が亡くなり遺品を整理していたら、乳児と思われる骨が木箱の中に。 なぜ?どういうこと? 憶測してことと事実は異なり、驚愕した。 とても大きな衝撃があったが、文章は静かに語られる。 そこに迫力を感じた。 短編集で、9作品どれも、とても怖面白かった。

2021/03/26

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