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ピスタチオ

ピスタチオ

ピスタチオ

作家
梨木香歩
出版社
筑摩書房
発売日
2010-10-01
ISBN
9784480804280
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ピスタチオ / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

巻末の「ピスタチオ―死者の眠りのために」は、この著者らしい感じだが、それ以外の部分は、これまでの梨木香歩とは随分とその趣が違っている。篇中の「棚」は、主人公の一人称語りのスタイルをとっているが、私小説風に見えるし、また後半のウガンダでの物語も、半ばは作者自身による紀行のようでもある。内容はまったく違うのだが、その世界観はなんだか『アガスティアの葉』を思わせるのである。

2012/02/23

jam

主人公女性のペンネーム「棚」の本名は翠。作品ではピスタチオグリーンのようにアフリカの赤銅の大地に萌芽する何かを探し旅する。それは呪術医という憑代をとおし、世界のバランスの維持に必要な干渉の表出を翠に投げる。この壮大な物語は、たとえば民族紛争を、たとえばエイズという病を、そして世界規模の気象異常を描く。翠は、表出された干渉に、緩衝という役割を担う。それは、鎮めたり創造するというものではなく「慰め」という終わりに物語を導くことである。あらゆる存在の根はひとつなのかも知れない。そう思わせる力がある物語だ。

2018/05/01

あつひめ

梨木さんと言えば、西の魔女が死んだが好きな作品だ。生まれてから死ぬまでの時間を丁寧に…そして恐れずに刻み込む。アフリカという響きも生と死が最も近い場所のような勝手なイメージがある。その中を答えを探すように走り回る主人公棚。盛り込みたいことがたくさんあったようで、ちょっとしまりの足りなさを感じてしまうけど、生きる中の苦痛や苦しみは、人も生き物も同じなんだよな…と自分なりのおちをつけてしまった。

2013/08/25

ミナコ@灯れ松明の火

ものすごくしなやかなのに、ものすごく強い。いや、しなやかだから強いのか。いつもの梨木作品と同様に、境界線上をふわふわと行ったり来たりするような、どこかこの世ではないどこかのような不思議な空気を感じる。死者には物語が必要で、人が死んでから紡がれる物語も存在する。最後に棚が書き上げた物語は、いつか必ず死にゆく私たち全員の物語なのかもしれない。スピリチュアルな話も多く、すんなり呑み込むことは難しかったけれど、読んでいる間梨木さんが作った大きなシェルターに守られているような、そんな気もした。

2012/02/23

アン

梨木さんの死生観が、遠く離れたアフリカの土地から、風に乗って運ばれてきたかのような読後感です。ウガンダでの呪術の必要性が描かれ、水や木等に宿る精霊の存在は神秘的で不思議な感覚に陥りますが、奇跡を信じたい気持ちは誰にでもあるかもしれません。巡る命。「死んでから初めて始まる人間関係」という言葉が印象に残ります。

2019/04/08

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