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火定

火定

火定

作家
澤田瞳子
出版社
PHP研究所
発売日
2017-11-21
ISBN
9784569836584
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「火定」のおすすめレビュー

「今と重なる!」――奈良時代に流行した疫病を通じて、不安と恐怖、人間の本質を描いた直木賞候補作

『火定』(澤田瞳子/PHP研究所)

 こんなにも“今”と重なる小説があるだろうか。2017年下半期の直木賞候補作となった『火定』(澤田瞳子/PHP研究所)の舞台は、奈良時代。民を救うため、というよりは、皇后の兄である藤原四子の威光と慈悲を示すために建てられた施薬院は、出世とは程遠いために官の足が遠のき、町医者だけで成立している。そこに新羅から持ち込まれた疫病――天然痘が流行し、都中がパニックになるなか奮闘する医師たちの物語だ。

 医者になんかなりたくないし、立身出世のためとっとと辞めたい、と不満をくすぶらせている下級官僚の蜂田名代(はちだのなしろ)。本書は、不平たらたらの若き青年の成長譚であると同時に、皇族を診療する職を得ながら同僚に陥れられ牢獄に入れられ、医師としての矜持を捨てた猪名部諸男(いなべのもろお)を対比的に描くことで、医療とは何かを問う物語にもなっている。

 治療法が見つからないまま人との接触を避けるしかない恐怖と不安。いかさまの神をでっちあげ、病に効くというふれこみで札を高額で売りつける宇須(うず)という男の扇動。藁にもすがる思いで札を信…

2020/4/16

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 先の見えないコロナ禍の中にある今。感染症拡大やパンデミックを描いたフィクション作品に注目が集まっている。「今と重なってつらすぎる」という感想も多いだろう。けれど、作品を読んで、改めて自分の立場でできることや、感染拡大に努めるべき理由を実感した、という人も少なくない。

 さまざまな報道や外出自粛が叫ばれる現状を、少し俯瞰してみる一助になるような6作品を紹介したい。

この記事の目次 ・『ペスト』 ・『いいなづけ』 ・『首都感染』 ・『復活の日』 ・『火定』 ・『リウーを待ちながら』

ついに100万部に到達! 伝染病の脅威を描いた名作・カミュ『ペスト』

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2020/4/19

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火定 / 感想・レビュー

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W-G

積んであった本。最近読んだ馳星周『四神の旗』と時系列が繋がることに気づき、読んでみた。藤原四兄弟は名前がちらっと登場するだけ。冒頭、宮城内で遣新羅使が倒れ、何かが始まりそうな不穏な空気を、読者にだけ抱かせるのは、映画的な演出で、上手く盛り上がっている。そこから、事実として特効薬がなかっただけに、どう発展させていくのか、気になり読み進めたが、結果感想は、退屈ではなくとも、予定調和の域を出なかったというところ。何か、突出した凄惨さや無常感があればもっと良かった。今読むのがタイムリーではあり、まずまず楽しめた。

2020/07/30

starbro

第158回直木賞候補になってから図書館に予約したので、ようやく読めました。候補作4作目(4/5)です。澤田瞳子は、新作中心に読んでいる作家です。天平パンデミック歴史医療小説、読み応えはありましたが、サプライズが少なく地味な作品のため、受賞を逃したような気がします。著者は近い将来、直木賞を受賞すると思いますが、全会一致、素晴らしい作品での受賞を期待しています。

2018/04/09

パトラッシュ

新型コロナに襲われている今日、日本最初のパンデミックである天平の疫病大流行を題材にした本作は興味深く読んだ。悲惨な死体の山や民衆暴動の描写などエンタメとしては面白く、天然痘と戦う医師や荒稼ぎをたくらむ悪党らの肖像もよく書けている。しかし、千三百年前の奈良時代を舞台にしながら登場人物は論理的に喋る無信仰の現代人ばかりに思えてしまう。この作者は強い文章力を持っているので読んでいるうちは迫力に流されるが、歴史小説でありながら当時の人や社会の考え方やあり方が感じられないのだ。取材不足や想像力の欠如ならば惜しいが。

2021/03/11

utinopoti27

時は西暦737年の平安朝。新羅より帰還した役人によってもたらされた天然痘の猛威が奈良の都を恐怖に陥れる。阿鼻叫喚の地獄と見まごうばかりの惨状に、人々の希望は潰えたのか・・。本書は人類普遍のテーマ「死生観」について、壮大な絵巻物を鑑賞したかのごとき読後感を味わえる作品となっています。己の生に執着するあまり、インチキ宗教に扇動される大衆の無様な姿を通して、人は何のために生き、そして死ぬのか、作者は問いかけます。『他人のために為したことは、たとえ自らが死んでも己が生きた証となって残るのだ』けだし、名言かと。

2018/04/06

nobby

もちろん奈良時代における天然痘による地獄絵図を見たことはあった。ただ、あくまで史実として習っただけの自分には、それを主題に描かれた人間ドラマは斬新かつ感動的だった。序盤は慣れない官職や人名の把握に戸惑ったが、早々に当時に引き込まれると分かりやすく繋がる様が心地よい。時代背景の真偽はともかく、新興宗教・外様への偏見・暴動へと陽動される様は生々しい。その“疫”に立ち向かう、ともに逝く、逃げ出す、利用する、自責に塞ぎ込むなど様々な葛藤が現代と重なるのがなかなか。読み終わり『火定』の意を噛みしめてなお余韻に浸る。

2018/07/29

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