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犬狼都市 (福武文庫 し 201)

犬狼都市 (福武文庫 し 201)

犬狼都市 (福武文庫 し 201)

作家
澁澤龍彦
出版社
ベネッセコーポレーション
発売日
1986-07-01
ISBN
9784828830209
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犬狼都市 (福武文庫 し 201) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

傑作短篇集。澁澤龍彦が紡ぎだす華麗な幻想に酔える。表題作は人間と動物の結婚というグロテスクな題材を、華麗な文体で硬質な幻想文学に昇華させる力技に圧倒される。主人公の麗子が宝石の中に入っていく場面が美しい。次の「陽物神譚」は、この作家しか書けない奇想に満ちた作品だ。古代ローマの孔雀神から玉ねぎ神への転換というほとんど冗談としか思えない出来事が、諧謔たっぷりに書かれる。「マドンナの真珠」は幽霊船に拾われた女性たちが、死霊と化した海賊たちに出会う。ユーモラスで童話的な結末が絶品。これぞ澁澤龍彦という感じだ。

2018/07/08

(C17H26O4)

『マドンナの真珠』がおもしろい。東シナ海に墜落した飛行機から救助された3人の若い女と男の赤児。命を助けたのは幽霊船の死者たち。死してもなお残る女体への肉欲から、女たちの衣服を没収するが、女たちはいたっておおらかである。甲板で陽の光のもとくつろぐ3人の女たちは生を謳歌しているようではないか。それとは対照的な死者の面々。ホルバインの髑髏のように凄惨な顔貌、象牙色の骨。女たちの輝く裸体にかえって恥辱にあえぐのだから滑稽だ。あげく→

2019/08/20

NAO

【戌年に犬の本】「犬狼都市」土着民に「妖魔の犬」と呼ばれているコヨーテと彼を溺愛する麗子の濃密かつ妖艷な交感。硬質な文章は幾分芝居がかっていて、いつしか妖しい世界の中に引き込まれていく。さまよえるオランダ人の伝説をベースとした「マドンナの真珠」は、幽霊船に生者を同乗させることで、死者たちの苦悩が一層引き立っている。それでいて、童話のようなラストが何とも印象的。久しぶりに澁澤作品を読んだが、堪能した。また、『高丘親王航海記』を読みたくなった。

2018/08/01

メタボン

☆☆☆☆ こういう小説もあるのか、とため息をついた。倉橋由美子の解説にもあるとおり、博物館に展示されている鉱石や宝物を眺めているかのような読後感だった。かくも美しくも乱れがましい獣姦「犬狼都市」、両性具有の悪夢と血みどろの陽物「陽物神譚」、骸骨船のオペラ「マドンナの真珠」。いずれも博識と想像力の賜物だ。

2017/09/27

水零

この世で一番かたい石ころの中にみとめた三日月の瞳。すぃっと飲み込まれた私の目の前に可愛いあなた(犬狼)。ツンと澄ましたその耳に私の声が小さく響く。ざらりとしたその舌が私の白い頬を嬲る。雄々しい前足が私の柔らかいものに沈む。「さっきは食べちゃってごめんなさい、愛していたのー吐きそうなほど」乱反射する光の海に身をまかせる。私はもう、どう仕様もないのです。ちっとも興味がなかったはずの小さな石が薬指にちょこん。あれは夢?それとも。薬指の彼には悪いと思ってよ。でもね、私はこの子と一緒に生きてゆくしかできないの。

2019/04/02

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