記憶の歳時記
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「記憶の歳時記」のおすすめレビュー
村山由佳デビュー30年・記念碑的エッセイ集。著者がはじめて明かす本音と、12の季節ごとに編まれた『記憶の歳時記』
『記憶の歳時記』(村山由佳/集英社)
この世でもっとも敬愛する作家の名前を聞かれたら、迷うことなく「村山由佳さん」と答える。村山さんの作品に幾度となく魂を救われて、この年まで生きてきた。その村山さんが、デビュー30年の記念碑的エッセイ集『記憶の歳時記』(村山由佳/集英社)を上梓した。発売後最初の休日、迷うことなく本屋に車を走らせた。
本書は、日本ならではの12の季節をなぞる順で、幼少期から現在に至るまで、著者のさまざまな記憶が綴られている。
“ある記憶がきっかけとなってするすると芋づる式に引っぱり出されてくる感情や理屈を、何度でもとっくり検証した上で、言葉に置き換えて定着する――それを地道に積み重ねることによってしか、私たちは自分という人間の輪郭をつかんでゆくことができないのじゃないかと思う。”
著者のこの言葉に違わず、本書には著者の輪郭が浮き上がっている。“ひと”だけにとどまらず、深い思い入れを示す“もの”にまつわる記憶も惜しみなく詰め込まれた一冊は、著者の軌跡そのものを垣間見ることができる。また、本書の締めくくりには、書き下ろしの掌編小説までも…
2023/12/16
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記憶の歳時記 / 感想・レビュー
starbro
村山 由佳は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、デビュー30周年 記念碑的自伝歳時記エッセイ、おまけに掌編小説「我が家の言いぶん」が付いてます。波乱万丈な人生だからこそ、面白い小説が書けるのかも知れません。 https://hb.homesha.co.jp/n/na0c90c676eab?magazine_key=m49ef45e5a51a
2023/11/15
万葉語り
今年最初の1冊。途中から作風がガラッと変わってダブルファンタジーは読んでいたが、そういうことだったのかと納得した。自分のルーツや生活や経験を大事にするところがよかれあしかれ作品にも今の暮らしにもつながっているのだと思った。背の君ってくすぐったい言葉ですね。2024‐1
2024/01/01
優希
作家生活30周年の記念的エッセイと言えるでしょう。12ヶ月の暦になぞらえて、日々の思い出や生活を紡いでいます。四季の彩りと共に歩んできたことを大切にしているという愛おしさがありました。
2023/11/05
よつば🍀
村山由佳さんのデビュー30年、記念碑的エッセイ。卯月から弥生までの、12ヶ月の季節を巡る記憶と、巻末に書き下ろし掌編小説「我が家の言いぶん」を加え書籍化した作品。幼少期のエピソードや父との想い出、母との確執、愛猫の話、2度の離婚、3度目の結婚生活などが綴られている。お母様との複雑な関係性、元夫の借金返済など、苦しい思いを経験されて来た村山さんだが、今現在がとてもお幸せそうで最終頁にはグッと来る。印象に残るエピソードはいくつもあったが、『弥生』の中で描かれた父に対する後悔には胸が締め付けられた。写真も満載。
2023/11/11
わんつーろっく
卯月から始まる歳時記をあえて「真冬の阿呆」と題する睦月から読み始めれば、自らの思い出に重なる昭和の情景に、早くも涙腺が緩む。お米屋さんから届くのし餅を切りながら、端っこを頬張る。霜柱や薄く張った氷を踏みながら、真冬の登校時はいつだって吐く息は白く、そんな記憶の断片がするすると顔を出す。そのあとの由佳さんとは何も重ならないけど笑、作家生活30年、執筆された作品の背景、家族、結婚生活、そして愛猫のこと。1日でもいいから彼より長生きして、こちらが見送ってやらなければならないという覚悟。これからも追いたい。
2024/02/04
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