かつて夢を見たことのあるすべての人に届けたいです

新刊著者インタビュー

更新日:2013/12/4

芸人の話だけど
芸人「だけ」の話じゃない

 2011年3月に刊行された単行本はたちまち増刷、スマッシュヒット。読者から大きな反響があった。その中でもやはり、本職のお笑い芸人たちのリアクションは激烈だった。例えば、「タカアンドトシ」のタカ。

「本を渡したら、その日の夜中にメールが来たんですよ。“明日の『いいとも』、目がパンパンに腫れて出ることになりそうです。今まで読んできた映画、小説、漫画、全部の中で、一番泣いちゃいました”って。サービストークも入ってるだろうけど、ありがたいことだなあと思っていたんです。でも、次の日『いいとも』を見たらホントに、とんでもなく顔がパンパンに腫れてたんですよ(笑)」

 本誌連載でもおなじみ、「オードリー」の若林正恭も愛読者だ。舞台版『芸人交換日記』(鈴木おさむの脚本・演出で2011年8月上演)では、「田中」役として出演。若林は文庫オリジナルの巻末解説で、舞台稽古初日に号泣したエピソードを初告白している。鈴木も証言する。

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「彼は本番でも全公演、泣いていました。自分だけの気持ちじゃなくて、いろんな芸人さんの気持ちが乗っかって、自然と涙が出ちゃったみたいです」

 間もなく公開される実写映画版は、「ウッチャンナンチャン」の内村光良が脚本・監督。作品タイトルなど細かな変更点はあるが、あくまで原作に忠実に、笑いと涙の物語を描き出した。映画の主題歌は、今年6月に解散することを先日発表した、ファンキーモンキーベイビーズが担当。不思議な縁が繋がり、『芸人交換日記』は着実に、読者層を広げつつある。

 最後に聞いてみた。文庫化で新たな読者を獲得する機会を得た今、この本を、どんな人に手に取ってもらいたいのか。

「中高生に読んでもらいたいですね。本を読んだことがない人が、最初に読む本って大事じゃないですか。この本は読みやすいし、夢を見ることは恥ずかしいことじゃないと、感じられるようになると思うので。ぜひ若い人に読んでもらいたいです。

 それと、意外かもしれませんが、30代のバリバリ働いている女の人からの感想もよく聞くんです。自分が働く意味って何だろうとか、自分の人生はこれで良かったんだろうかって考えている人にとっては、すごく響く作品になっているみたいで。自分の愛する彼氏が必死で夢を追いかけている、あるいは、夢を諦める瞬間に立ち会う。そんな時に自分には何ができるんだろうっていう、恋人目線から読む人もたくさんいました。

 この本はタイトル通り、芸人の話だけど、芸人だけの話ではありません。今夢を追いかけていたり、かつて一度でも夢を見たことのあるすべての人に、この本を届けたいですね」

取材・文=吉田大助 写真=下林彩子

紙『芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜』

鈴木おさむ 太田出版 540円

結成11年目の売れない漫才コンビ「イエローハーツ」。ボケ&ネタ作りの田中はクール青年で、堅実にTSUTAYAでアルバイト。ツッコミ担当の甲本は、キャバクラ嬢のヒモとして貧乏暮らしをしのぐ、でたらめ男。ふたりは売れるために、手書きの交換日記を始める。やがて未来が、大きく変わる─。夢を諦めた人だけじゃない。夢を叶えた人は、その後どうなるか? 両方の道のりを描き出す。

青春のすべてを捧げ駆け抜けた、あるお笑いコンビの感動の物語。

映画『ボクたちの交換日記』

監督・脚本/内村光良 原作/鈴木おさむ『芸人交換日記 〜イエローハーツの物語〜』 出演/伊藤淳史、小出恵介、長澤まさみ、木村文乃、佐々木蔵之介 主題歌/ファンキーモンキーベイビーズ『サヨナラじゃない』 3月23日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
(c)2013「ボクたちの交換日記」製作委員会