【前編】運命に導かれた奇跡的なコラボレーションで生み出された最高の電子書籍図鑑

新刊著者インタビュー

更新日:2013/7/22

7月1日に日本版がリリースされてから、いまだ話題沸騰中の『マーカス・チャウンの太陽系』。その翻訳をしたのが、糸川洋さん。惑星イトカワの由来でもある日本の宇宙開発・ロケット開発の父と呼ばれる糸川英夫博士の甥なのです。そして、発行元は『元素図鑑』のタッチプレスで、著者は英国の著名サイエンスライターであるマーカス・チャウン氏。この運命で導かれたかのようなコラボによって、画期的な太陽系の電子書籍図鑑が生まれたのです。その誕生秘話を、糸川洋さんにうかがいました。

 

紙の書籍では絶対に真似できない電子書籍がついに誕生

糸川 洋

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いとかわひろし●1949年、東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、医療器械メーカー勤務、マニュアルライターなどを経て翻訳者に。『マーカス・チャウンの太陽系』を翻訳。訳書に『僕らは星のかけら』(マーカス・チャウン著、SB文庫)、『数学のおもちゃ箱』(クリフォード・A・ピックオーバー著)、『超マシン誕生』(トレイシー・キダー著)、『ポアンカレ予想を解いた数学者』(ドナル・オシア著、以上日経BP)など多数。惑星イトカワの由来である、糸川英夫博士の甥。

発展途上中の電子書籍。iPadやスマートフォンなどの電子メディアが持つ機能とコンテンツの魅力を掛け合わせ、これまでの紙の書籍を超える高みまで到達した「作品」はまだまだ少ないと言えるかもしれません。

しかし、7月1日に日本語版がリリースされた『マーカス・チャウンの太陽系』は違います。千枚近くの美しい惑星たちの画像、スワイプして惑星をくるくると動かしたり、火星探査車が実際に撮影した動画が観れたりと、iPadでしか実現し得なかった、リアルな太陽系の姿を手にすることができるのです。

まさに究極の「太陽系図鑑」。電子書籍の未来と可能性を感じさせる作品です。そのクオリティの高さはAppleのスティーブ・ジョブズがiPad2のプレゼンテーションで使ったビデオに『マーカス・チャウンの太陽系』の土星の映像が登場することからもわかります。

そして、何より素晴らしいのが太陽系の星を知る図鑑なのにもかかわらず、壮大な物語とその発見の歴史が美しい文章でつづられていること。本作には翻訳電子書籍にありがちな、ちぐはぐな日本語表現はいっさいありません。原著者であるマーカス・チャウンの筆力と表現力を倍増させているのが、翻訳者である糸川洋さんの日本語訳です。

しかも、偶然とはいえ、糸川さんは日本の宇宙開発・ロケット開発の父と呼ばれる糸川英夫博士の甥。糸川洋さんのサイエンスへの造詣の深さ、的確かつウイットに富んだ日本語表現で『マーカス・チャウンの太陽系』はこれまでの図鑑をはるかに超えた、読み応えのある作品となりました。マーカス・チャウンからの糸川さんへの絶大な信頼は、本作の「まえがき」で熱く語られています。翻訳者がここまで大きく扱われるのは、紙の書籍でもないことです。

 


 

また、本作はダ・ヴィンチ電子書籍アワード2011で「電子書籍 書籍賞」を受賞した『元素図鑑』の発行元であるタッチプレス、著者であるマーカス・チャウン、そして翻訳を超えた日本語訳を完成させた糸川洋さんの奇跡的なコラボレーションで誕生しました。そこで、2週にわたって、翻訳者である糸川洋さんから日本語版の制作秘話をうかがいます。