日本人なら読んでおかなきゃヤバい! 夏目漱石おすすめ作品まとめ

文芸・カルチャー

2018/9/16

 日本近代文学の巨峰として、今なお高い人気を誇る夏目漱石。日本人の私たちが文学の世界に浸るためには、彼が外せないことは言うまでもない。高校生の頃、教科書に抜粋された『こころ』の一部を読んだという方も多いことだろう。その一部にとどまらず全文を読んでみると、より一層作品の世界を楽しめる。

 近代文学にお堅い印象を持つ方も、漱石を読んでいくうちにその印象は少しずつ変わってくることだろう。漱石の作品は鋭い風刺やユーモアに溢れ、また彼自身の人となりもふんだんに滲み出ている。学生時代に頭を抱えながら読んだという人も、大人になった今になって読み返してみると、新たな発見に心躍らされること間違いなしだ。本稿ではそんな夏目漱石の不朽の名作を5選、ご紹介したい。

■人に裏切られることの地獄。人を裏切ることの地獄。―『こころ』

 人間のエゴは、時として親友をも裏切り、また自身も裏切られる。主人公の少年が「先生」と彼の亡き友「K」の過去を知るというストーリーで、死に至る人間の心の過程を主題とした不朽の名作。

■猫目線の風刺とユーモアがたまらない―『吾輩は猫である』

 「ホトトギス」に連載された漱石の処女作。「吾輩」と自称する猫が人間社会を眺めながら批評するという形式が痛快で、その風刺は現代人である私たちにも大いに当てはまる。

■曲がったことが大嫌い。人情あふれる物語―『坊っちゃん』

 親譲りの無鉄砲で子供の頃から乱暴ばかりしている少年、「坊っちゃん」を取り巻く人情物語。荒っぽいが、曲がったことが嫌いで率直な坊っちゃんの人間味に惹きつけられる。

■彼女に足りなかったのは、「憐れ」―『草枕』

 現実を第三者としての立場から眺め芸術を創造する「非人情」の境地から、漱石の芸術論が詰め込まれた初期の代表作。画家の青年の心の中で絵が完成されるまでの内面描写は圧巻だ。

■純真な青年を取り巻く、故郷・学問・恋愛―『三四郎』

 『それから』『門』へと続く三部作の一つ。女性にどう向き合えば良いのか分からないエリートの主人公が、九州の田舎から上京してくる物語。「無意識の偽善者」を思わせる女性に恋する描写が繊細だ。

 最初は学者として英文学の研究に没頭していた漱石。四書五経を典型とする東洋的な倫理性・道義観と、先進的な西洋文学の高度な知性によって支えられた漱石の文学は、今もなお多くの人々から愛されるだけのレベルの高さを誇る。

 また余談だが、江戸の牛込で生まれ明治の東京人として育った漱石の小説には、都内の具体的な地名が多く登場する。時代が進んでも変わることのない、首都東京の根底にある「何か」を漠然と感じることができるのも漱石文学の醍醐味だと、地方出身の筆者は思っている。小説を読んだ後には、作品のゆかりの地を巡る文学散歩も楽しいのでおすすめだ。

文=K(稲)