【文芸・カルチャー編TOP10】2019年人気記事ランキング

文芸・カルチャー

2019/12/28

 日本出版販売(日販)とトーハンが発表した「2019年 年間ベストセラー」によれば、2019年もっとも売れた文芸書は、瀬戸まいこ氏著の『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)だそうだ。血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった少女の物語は「本屋大賞」を受賞したことから人気に火がついた。その他にも魅力的な文芸書・カルチャー本が発売された2019年。

 ダ・ヴィンチニュースユーザーたちは今年、どんな記事を読んだのだろうか。見てみると、年間ベストセラーにはランクインしていない作品ばかりで、まだ読んでいない本に出会うことができる!早速、「2019年人気記事ランキングTOP10【文芸・カルチャー編】」を見てみるとしよう。

【第1位】夕方の神社には“アレ”が出るのでお参りはご法度。宮司が聞いた神社にまつわる怖い話

『神恐ろしや』(三浦利規/PHP研究所)

 秋田県・伊豆山神社の宮司・三浦利規さんが、神職を通して知り得てきたという数々のエピソードを描いた本。それが『神恐ろしや』(PHP研究所)だ。

 この本のエピソードは、どれも独特な不気味さをかもし出している。例えば、日暮れ時は、神社に魔物が現れ、見た者を容赦なくその人を不幸にしてしまうので近づかない方が良いらしい。現に、毎日夕方に神社を拝んでいた女性は、ある日、黒い“何か”を目撃してしまい、そのことを打ち明けた日の夜亡くなってしまった…。死の真相を探ることはできないが、いずれにせよ、心のどこかにどんよりとした気持ちを残すエピソードである。

 信心深い皆さんも、日暮れ時の神社参りには気をつけたほうがいいかもしれない…。

【第2位】実況のカリスマ・倉敷保雄が、処女小説でサッカーにまつわる少年少女たちの人生を実況する!

『星降る島のフットボーラー』(倉敷保雄/双葉社)

 サッカーの実況アナウンサーの中でも、群を抜いて人気がある倉敷保雄さん。そんな彼が書き下ろした処女小説が『星降る島のフットボーラー』(双葉社)だ。

 15歳の日本人フットボーラー・星野遥也こと「ハル」は、幼馴染の少女・天美六花の父がオーナーを務めるエストレージャFCに入団。チームメイトやスタッフとともに、ライバルチームと競い合い、プロ選手として高みを目指していくのだ。

 しかし、この物語は、さわやかな青春ストーリーにとどまらない。欲望と野望を持った悪の大人=マフィアが近づいてくるのだ。不正まみれのリーグは浄化されるのか?サッカー指南書のようなプレー描写あり、バトルマンガのような激しい戦いあり、ボーイ・ミーツ・ガールの恋物語ありと、盛りだくさんな展開には驚かされる。

 倉敷さんの中に積もりに積もった「フットボール」への情熱と知識と愛が詰まったこの本はフットボールにまつわる少年少女たちの人生を実況したもの、といえるのかもしれない。

【第3位】キキがジジと話せなくなった理由は? ジブリ映画には禅問答が隠されていた!

『禅とジブリ』(鈴木敏夫/淡交社)

『禅とジブリ』(鈴木敏夫/淡交社)は、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏と、3人の禅僧との対談集だ。本書では、ジブリの映画作品にも触れ、禅との関係性や共通する考え方を紹介している。

 例えば、キキの相棒の黒猫ジジはなぜ途中から話せなくなったのかと言う問いに対し、鈴木氏はこう答える。「僕は、あの映画をキキとジジの対話の映画じゃないかと思っているんです。つまり自分との対話。まだ自己を確立していないキキが自分になるプロセスを映画にしたんですね」。

 確かに『魔女の宅急便』はキキの成長物語だが、ジジはもうひとりのキキの化身だったのかもしれない。大人になった私たちは、自分を見つめる時間を失いがちだ。禅語には、「即今目前(そっこんもくぜん)=今を生きよ」という言葉があるという。

 他にも『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』など数々のジブリの映画製作エピソードが禅の考えに繋がる。禅を身近なものとしてページを進めることができる1冊。

【第4位】フェイクかそれとも本物か? 「三億円事件」真犯人による告白小説は、実は……

『府中三億円事件を計画・実行したのは私です』(白田/ポプラ社)

 昭和最大の窃盗事件「三億円事件」が発生したのは1968年のこと。犯人未詳のまま、公訴時効、民事時効が成立して、文字通り完全犯罪となったこの未曽有の事件は、現在に至るまで、事あるごとにマスコミに取り上げられてきた。こうした中、真相を告白する文章が小説投稿サイトにアップされているとして、ネット中の話題をさらった。その文章は白田氏による『府中三億円事件を計画・実行したのは私です』。ポプラ社から書籍としても刊行された文章だ。

 しかし、読み始めると、これは犯罪実録ではないことに気付かされるだろう。綴られているのは、大人になる直前、まだ何者でもない自分を持て余しながらも、何者かになりたいと希求する若人の、魂の記録だ。出会ってしまった四人の男女。若者らしい友情と恋愛。そして、裏切り。犯罪で「青春」を完結させた彼らの物語は、きっと老若男女問わず、多くの人々の心を揺さぶるはずだ。

【第5位】彼女持ちの12歳年下イケメンの子供を妊娠! 四十歳で未婚出産はありかなしか

『四十歳、未婚出産』(垣谷美雨/幻冬舎)

 テレビドラマ化した『結婚相手は抽選で』(双葉社)など、世の中を鋭くとらえ、ユーモラスに描き出す小説家・垣谷美雨さん。そんな彼女による、現代の女性に向けたエールのような作品がある。その作品とは、『四十歳、未婚出産』(垣谷美雨/幻冬舎)だ。

 旅行代理店で働く宮村優子は、この冬で40歳。28歳のイケメン社員・水野匠と、団体ツアーの下見に訪れたカンボジアで、うっかり男女の関係になってしまった。結果、妊娠検査薬の反応は陽性。若く美しい恋人がいる水野を苦しめる気はないし、問題の夜は酔っ払っていたとはいえ、合意の上で及んだ行為だ。このまま何も言わずに、こっそり堕ろすべきか。

 でも、年齢を考えると、子供を産む最初で最後のチャンスだ。優子は、お腹の子の命と自分の生き方に、どのような決断を下すのか…!?現代を生きるすべての女性、そして生きづらさを抱えるすべての人におくる、痛快な応援小説。疲れた心が、きっとやさしく励まされます。

【第6位】太宰治があの大物作家に突きつけた「悪口」が陰湿で凄い!? 言葉のプロの悪口集

『文豪たちの悪口本』(彩図社文芸部:編/彩図社)

 文豪と呼ばれた大作家たちは、カッとなった時、どんな言葉を綴ったのだろう。それは、『文豪たちの悪口本』(彩図社文芸部:編/彩図社)を読めば知ることができる。

 本書は、文豪たちが悪口を言うまでに至った経緯や人物像についても丁寧にまとめられているため、より深く文豪たちの当時の心境に思いを馳せることができる。たとえば、芥川賞を逃した太宰治は、選考委員の川端康成の悪口を記した抗議文を「文藝通信」に投稿した。

 その内容は、犬や小鳥を育てながら女の舞踊にのめり込む厭人癖の男を描いた川端康成の名作「禽獣」を彷彿とさせる一節だ。“小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った。”“あなたは、作家というものは「間抜け」の中で生きているものだということを、もっとはっきり意識してかからなければいけない。”文豪たちの悪口や愚痴に触れることで、彼らの“人生”を知ることができるような気がする1冊だ。

【第7位】ホラーを好むのは人生に絶望している人? 恐怖を感じる構造をズバリ分析

『恐怖の構造』(平山夢明/幻冬舎)

『恐怖の構造』(平山夢明/幻冬舎)は、ホラー作家の名手である著者が、「恐怖」のメカニズムを徹底考察した「『怖い』の理由が分かる」1冊だ。たとえば、「恐怖が好きな人と嫌いな人」の違いは、「人生がどれほど絶望的か」に関係があるのではないかと、著者は考えているのだそう。恐怖体験があまり好きではない人は、悩みを健全な形で前向きに解決できるタイプ。潜在的に自分の人生を肯定しており、その日常にヒビを入れかねない「恐怖」を不安視しているのだ。逆に、自暴自棄に陥っていたり、酷くストレスが溜まっていたりする人は、恐怖を求め、恐怖体験を楽しめる。小難しい学説や理論ではなく、小説家の著者が「『恐怖書きのプロ』として持論を展開」しているので、読み物としても面白い作品だ。

【第8位】「亡き夫のために、整形して憎い男の妻になりました」壮絶な復讐劇の結末は?

『灼熱』(秋吉理香子/PHP研究所)

 たったひとりの人物との出会いが、人生を焼き尽くしてしまうようなことがある。『灼熱』(秋吉理香子/PHP研究所)は、読後にそんな想いに駆られる衝撃作だ。

 主人公の絵里は医者である久保河内英雄と入籍し、同居を始めたばかり。おいしい手料理を振舞い、仕事へ出かけていく英雄を見送る絵里は幸せいっぱいのように見える。しかし、絵里はこの結婚を通じて、誰にも言えないような復讐を遂げようと目論んでいた。彼女は亡き夫の復讐のために、整形して憎い男の妻になったのだ。

 しかし、ひょんな出来事を機に彼女は新しい夫である英雄に惹かれ始め、ある疑問に苦しむようになる。「彼は本当に人を殺したりできる人なのだろうか?」ラストに近づくにつれ、読み手の背筋が凍るような本作。あなたも予想外の結末や、いつの間にか自分の頬を伝う涙に驚くはずだ。

【第9位】女児誘拐殺人事件の犯人が出所後「無実主張」のサイトを開設…冤罪なのか? 真犯人は?

『審判』(深谷忠記/徳間書店)

 無実であるのに犯罪者として取り扱われてしまう冤罪事件は、その事実が明るみに出ず闇に葬られてしまうこともあるのではないだろうか…? そんな重いテーマにミステリー要素を絡めた『審判』(深谷忠記/徳間書店)は、司法の力の限界や絶対的正義の不確かさをも感じさせる、示唆的要素の多いサスペンス小説だ。

 少女誘拐殺人事件の犯人として逮捕され、刑を終えて出所した柏木は《私は殺していない!》というホームページを開設する。自分が冤罪であることを綴るうちに、書き込みだけにとどまらなくなった柏木は、自分を自白に追い込み殺人犯に仕立て上げた元刑事・村上宣之の周辺に姿を現すようになった。そんな折に、村上のもとにはかつての部下・堤達夫が何者かによってレンタカーでひき逃げされ殺されたという連絡が入る。

 果たして、堤が殺された事実と奇妙な柏木の行動にはどのような繋がりがあるのか? 予測不能なストーリー展開に絶えずハラハラさせられる本作は、人が人を裁くことの難しさという重いテーマを問うている。

【第10位】世界累計100万部突破! 異世界ファンタジー「毒見師イレーナ」シリーズがついに完結

『イレーナ、永遠の地』(マリア・V・スナイダー:著、宮崎真紀:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)

 あの異世界ファンタジーシリーズがついに完結する。『イレーナ、永遠の地』(マリア・V・スナイダー:著、宮崎真紀:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)は、世界累計100万部突破の「毒見師イレーナ」シリーズ第6弾。

 絞首刑になるか、それとも、国の最高司令官の毒見役になるか…。ある殺人を犯した罪で死刑囚となった少女イレーナの前に提示される選択に始まるこの物語シリーズは、NHK-FM青春アドベンチャーでラジオドラマ化されたり、読書家として知られるタレント・壇蜜がこの作品のファンであることを公言していたりと、日本でも大きな話題を呼んでいる作品だ。

 次々と襲いかかる敵。交錯する思惑。陰謀。裏切り…。どんな脅威にも毅然と立ち向かう勇ましいイレーナに、あなたもたちまち、虜になるに違いない。

 さあ、今すぐ、イレーナと冒険の旅に出かけよう。この怒涛のクライマックスを、ぜひともあなたも、体感してみてほしい。

集計期間:2019/01/01~2019/12/20

文=アサトーミナミ