「チャタレイ夫人の恋人」裁判の被告が送る、恋愛、結婚、人生を考えるための手引き書
この本の著者、伊藤整は、1950年にわいせつ文書として裁判になった、D.H.ロレンス著「チャタレイ夫人の恋人」の翻訳者としても知られる。 「女性に関する十二章」は、その後、1950年代初めに「婦人公論」に連載されたエッセイで、戦後、憲法上男女平等になり、選挙権も持つようになって、戦前とは違う恋愛観、結婚観を持ち始めた女性たちに送るメッセージというような内容。 戦後わずか6、7年という時代に、当時の一定の教養のある女性たちの意識がどのようなものだったかわかって興味深い。 伊藤整は頭でっかちの女性読者をややからかいつつ、男女平等も高い理想も大切ではあるけれども、男女の本質的な違いは厳然とあることも認めた方がいいというスタンスで話を進めていく。 そして、自分も相手も息苦しくならないような関係を築くには、どうしたらいいかと具体的に話を展開していくのだが、後半は次第に、生物としての人間が幸福に社会の中で結婚生活を送るにはどうしたらいいか、という、本質的なテーマに移っていく。 「生物としては調和的な結婚という生活様式は、その中に論理、情緒、芸術…