東京封鎖、学校一斉休校、海外渡航者隔離…10年前に刊行されていたウイルスの脅威を描いた小説『首都感染』
『首都感染』(高嶋哲夫/講談社)
医学が高度に発展した現代社会において、新型コロナウイルスがこんなにも猛威をふるうとは思わなかった。「まさかこんな事態になるとは…」というのが多くの人の思いだろう。しかし、高嶋哲夫氏による小説『首都感染(講談社文庫)』(講談社)は、まさに、この事態を予想していたような小説だ。この作品は、2010年に書かれたフィクションだが、ウイルス感染症の広がりから国の対応まで、今の現実と恐ろしいくらい酷似している。その内容に驚きの声が広がり、10年前の作品だというのに数万部も増刷されたいま話題の小説なのだ。
物語の舞台は、20XX年。中国でサッカー・ワールドカップが開催され、中国が決勝へと勝ち進んだこの時、スタジアムから遠く離れた雲南省では致死率60%の強毒性の新型インフルエンザウイルスが出現していた。中国当局は、ウイルスを封じ込め、これを隠蔽しようとするが、失敗。世界中から集まったサポーターたちが帰国することで、恐怖のウイルスは世界各国へと広がってしまった。
日本では、元WHOの感染症対策チームのエキスパートで、医師の瀬戸崎優…