「なぜ撮らないんだ!?」とモチーフが叫ぶ! カメラも叫び、訴える! 戦後を代表する写真家・土門拳の熱き写真論
『土門拳 写真論集(ちくま学芸文庫)』 (土門拳/筑摩書房)
リアリズムに立脚した報道写真や、寺院、仏像などの伝統文化財を数多く撮影した写真家・土門拳(1909~1990)。彼は戦後日本を代表する写真家であるのみならず、写真界で屈指の名文家としても知られている。 宇治の平等院へ撮影に行った帰り、鳳凰堂に別れを告げようとして振り返ってみたら、茜雲を背にたそがれている鳳凰堂は、静止しているどころか、目くるめく速さで走っているのに気がついた。しばし保然となったわたしは、思わず「カメラ!」とどなった。 という描写で知られる「走る仏像」と題した文章は有名だ(『土門拳の古寺巡礼 第三巻 京都(一)』(小学館)に収録)。
『土門拳 写真論集(ちくま学芸文庫)』(土門拳/筑摩書房)は、そんな彼の写真にまつわる文章を400ページにわたって収めた文庫オリジナルのアンソロジー。第1部ではカメラ雑誌で行われていた写真コンテストの月例選評を、第2部では写真に関する評論・エッセイ24篇を収録している。
スマホの普及で誰でもキレイな写真を撮れるようになった……というのは最近よく聞…