放送作家が見た、エンターテイメント界の舞台裏
『幸せな裏方』(新潮社)
華やかに見えるエンターテイメント界だが、「主役」として人気者になれるのはほんの一握りだ。逆を言えば、数え切れないほどの「裏方」の存在が「主役」を引き立てているといっても過言ではない。
しかし「裏方」の目から見る業界は、新鮮な驚きを観客や視聴者に与えてくれる。『幸せな裏方』(新潮社)は作家・放送作家としてキャリアを築いてきた藤井青銅さんが、創作エピソードの数々を綴ったエッセイ集である。あの大物芸能人の意外な素顔が見えたり、社会人として参考にしたい仕事の進め方を教わったりともりだくさんの内容だ。
23歳にして「星新一ショートショート・コンテスト」に入選、以降は小説家と放送作家を兼業してきた藤井さんは、「流しの作家」というユニークな別名を持っている。局内で声がかかればどんな仕事でも引き受ける藤井さんの姿勢が、流しの歌手にそっくりだからだ。
「藤井さん、時間ある?」この一言に、藤井さんは「あります」と返事せずにはいられない。結果、癖のある企画ばかりを背負い込んでしまうことになる。チェッカーズのラジオ番組のオープニングコントを本番…