怖いだけじゃなく思わずクスッと笑わされる! 芥川賞作家・藤野可織の“幽霊探し”エッセイ
この世から何の未練も残さず去ることのできる人などいるわけがないのだから、世の中に無数の幽霊が潜んでいたとしても何もおかしいことではない。だが、幽霊は見える人には見えるし、見えない人には見えない。一度くらいは幽霊を見てみたいものだが、そう簡…
この世から何の未練も残さず去ることのできる人などいるわけがないのだから、世の中に無数の幽霊が潜んでいたとしても何もおかしいことではない。だが、幽霊は見える人には見えるし、見えない人には見えない。一度くらいは幽霊を見てみたいものだが、そう簡…
昔住んでいた部屋に今は別の人が暮らしているなんて想像できない気がしていたが、ベランダに干された知らない誰かの洗濯物を見たとき、ああ、別に何も寂しがる必要なんてないのだと思った。家は住人とともにあらゆる形に成長していく生き物なのだろう。住む…
いくら食べてもいくら寝ても満たされない時、子どもは、「何か面白いお話して何か面白いお話して」と人にねだる。大人だって同じようなものだ。単調な生活だけでは物足りない時、人はいつも面白い話を求める。人に元気を与えてくれる「お話」がたくさん入っ…
怖い話ですよ、これは……。少なくとも巷のサイコホラー程度には。しかも、武器を見せつけたり、狂気の理由を書いたりしないから余計に怖い。内容がいちいちグッサリ鋭いのに、鋭利な刃物は見せない。例えていえば、紙で指を切ったらその紙に遅効性の毒が塗っ…