SFファンは読まずにはいられない! SFアンソロジーシリーズが電子化!

小説・エッセイ

2014/3/22

NOVA〈1〉―書き下ろし日本SFコレクション

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 河出書房新社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:大森望 価格:972円

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 宇宙旅行だって夢ではない現代、思い描いていた未来が現実となってしまえば、SF作家は商売あがったりか、と思いきや、その人気は高まるばかりだ。現実味が増せば増すほど、SF小説は深みが増していく。科学技術が進化するほど、SF小説の幅が広がっていってきているといっても過言ではないだろう。

 大森望責任編集『NOVA 1 書き下ろし日本SFコレクション』は日本SF書き下ろしアンソロジーだ。河出文庫創刊30周年の記念企画である『NOVA』は大森氏の「本格SFの短編が定期的に載る媒体がもう少しあってもいいじゃないか」という発案で立ち上げられたシリーズ。その記念すべき第1巻である本作は、2010年代の日本SFの中軸を担うべき作家たちの作品11編が集められているのだから見物だ。伊藤計劃円城塔、北野勇作、小林泰三、斉藤直子、田中哲弥、田中啓文、飛浩隆、藤田雅矢、牧野修、山本弘という作家のラインナップは元からのSFファンもこれからSFに挑戦しようという者も必読のものといえる。

 この本に収められている作品は、狭義のSFには該当しない幻想譚から本格SFまで傾向はさまざまだ。例えば、北野勇作著『社員たち』では、得意先から帰ってきたら、会社が地中深くに沈んでいたサラリーマンの姿が描き出されており、読み進めているうちに社長と平社員との関係についてぼんやりと考えさせられる。小林泰三著『忘却の侵略』では、地球へとやってきた侵略者と戦うストーリーその侵略者が人の記憶を消す能力を持つというストーリーで思わず手に汗握る。藤田雅矢著『エンゼルフレンチ』では、深宇宙に旅立つ少年と離ればなれになった少女の切ない恋模様が鮮やかに描きだされている胸がきゅんと締め付けられる。さまざまなタイプの短編は宇宙を彩る星のようにさまざまな個性で瞬いており、どの話をとっても魅力的だ。

 特に気になったのは、田中啓文著『ガラスの地球を救え!』。宇宙客船の操縦士が謎の霊に憑依され、陰陽師が除霊するというシーンから始まる。「われは…テヅカ…テヅカオサムの…神霊である…」。思わず笑みがこぼれるドタバタぶりで、そのユーモアあふれる世界観に惹き付けられる。このように多くの作品の中から自分の好みを探し出すのも楽しいだろう。

 「ここに収められた11編は、“新星(nova)”の名にふさわしい強烈な輝きを放っていると信じている」と大森望が述べている通り、この本の中の作品はどの作品もまばゆいばかりの輝きを持っている。SF好きもそうでない人も必読のシリーズだ。


大森氏の熱い想いが感じられるシリーズ

謎の侵略者と戦う、小林泰三氏の『忘却の侵略』

手塚治虫の神霊が出現する、田中啓『「ガラスの地球を救え!』

作品解説も読んでいてワクワクさせられる。科学技術が発展した現代だからこそ、SFが楽しい!

伊藤計劃『屍者の帝国』(絶筆)も収められている