禁じられた村の”お屋敷”でかくれんぼ。少年がかくされた理由とは?/3分間ミステリー 3つのトリック1⑤

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/27

かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 3つのトリック』(黒史郎/ポプラ社)第5回【全16回】

1話2~3ページの短い物語を読み、その中の”かくされた意味”を考える『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ。物語を読み終わったら想像力を巡らせ、解説ページで答え合わせをするのがこのシリーズの楽しみ方! 今回の連載ではシリーズのなかでも人気の4冊から、それぞれ4つの物語をご紹介します。やさしいものから大がかりなトリックが仕組まれたものまで、あなたは物語の真の意味にたどり着けるか?

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かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 3つのトリック
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 3つのトリック』(黒史郎/ポプラ社)

かくれんぼ

 ぼくが住んでいた村には《お屋敷》と呼ばれる、とても古くて大きな蔵があった。

 その中には、いろんな古い道具が埃をかぶって保管されている。

 この蔵の所有者は不明。

 いつからあるのかもわからない。

 おじいさんとおばあさんが子どもの頃からあるらしくて、みんな興味はあったけど、決して入ろうとはしなかったらしい。

 こんな言い伝えがあるからだそうだ。

 

 悪い子は《お屋敷》の中で、かくれんぼをしてはいけない

 やれば、この世から、かくされてしまう

 

 昔の子どもたちは、こわがって近づきもしなかったらしい。

 ぼくのおばあちゃんも、こういってたっけ。

「《お屋敷》で子をかくすのが、鬼なのか、神様なのか、天狗様なのかはわからんが、だれでもかれでも、かくすわけじゃあない。その子がかくされるのには、ちゃんと意味がある。その意味に気がつけば、かくされた子は、この世に帰ってこられる──そういわれとるよ」

 でも、ぼくはそんな話は信じなかった。

 だって、鬼や天狗や神様なんて、この世にいるわけがないから。

 だからぼくは、あの日。

 タケルとヒロシとミツルの四人で、《お屋敷》でかくれんぼをやってしまったんだ。

 タケルなんてとくにやる気まんまんで、彼が一番、言い伝えを信じていなかった。

「知ってたか。迷信ってのはさ、大人の作ったウソなんだぜ。《お屋敷》の中を荒らされたくないとか、子どもが服を汚して帰ったら洗濯が大変だとか、そういう『大人の都合』から生まれたものなんだ。こんな《お屋敷》なんて、ただのおんぼろ小屋じゃん。邪魔なんだから、早くぶっ壊しちまえばいいのにさ。こうやって!」

 そういってタケルは、蔵の中にあった箱のひとつをガンガンと蹴った。

 その箱は壊れてしまった。

 

「じゃーんけーん、ポンっ──あっ、くっそー、おれが鬼かよー」

 タケルは腕で目め隠しをし、百まで数えはじめた。

「──きゅうじゅうはーち、きゅうじゅうきゅー、ひゃーく! もういいかーい!」

「「「まーだだよー!」」」

 ぼくら三人で声を合わせて返す。

「もういいかーい!」

「「「まーだだよー!」」」

「早くかくれろよなぁ。──もういいかーい!」

「「「まあだだよー」」」

「おそいぞー! もう探すからなー!」

「「「「「「「マァダダヨオオオ」」」」」」」

   ※

「まだ、なのか?」

「ああ。まだみたいだよ」

「もう、いいのにな……」

 ぼくとヒロシとミツルは《お屋敷》を見あげ、懐かしい日々を思い返していた。

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