ぶっきらぼうな医師から「最後に会いたい人はいるか」と聞かれた患者の答えは?/3分間ミステリー 3つのトリック2⑥

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/28

かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 3つのトリック』(黒史郎/ポプラ社)第6回【全16回】

1話2~3ページの短い物語を読み、その中の”かくされた意味”を考える『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ。物語を読み終わったら想像力を巡らせ、解説ページで答え合わせをするのがこのシリーズの楽しみ方! 今回の連載ではシリーズのなかでも人気の4冊から、それぞれ4つの物語をご紹介します。やさしいものから大がかりなトリックが仕組まれたものまで、あなたは物語の真の意味にたどり着けるか?

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かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 3つのトリック
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 3つのトリック』(黒史郎/ポプラ社)

最後に会いたい人

 ある医師と、ある患者の会話。

「先週の検査の結果だけどね。キミの心臓に影がある。これはもう手遅れだね」

「そ、そんな……希望はないんですか⁉」

「ないね、ぜんぜん。ところで手術はどうする? やる?」

「──希望がないのに、やる意味はありますか?」

「ないけど、無駄でも百億分の一の奇跡にすがりたいというのならね」

「考えさせてください……」

「うちも、ただ寝かせておくためにベッドがあるワケじゃない。早めに考えて」

 

 数日後。

「そろそろ手術するかどうか、決めてほしいんだけど」

「……はい。手術を受けることにします。覚悟を決めました」

「あ、そう。うまくいかない可能性は高いけど恨まないでね」

「わかってます」

「ふーん。今のうちに会っておきたい人はいる?」

「はい、います」

 

 一カ月後。

 この患者の手術は見事に成功し、健康を取り戻した。

 心優しく、素晴らしい技術を持つ医師のおかげで。

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