SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第30回「宝くじ」

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公開日:2023/12/27

 え、なんか滅茶苦茶当たってた気がする。

 

 いや、わかってる。そんなわけないのはわかってる。たった数枚の宝くじで、一攫千金なんて夢のまた夢だ。ちっともリアルじゃない。それに私の気持ちは弱いし、展望も薄いはずだ。当たらないと思ってるんだから、当たらないはずだ。でも、なんだろう。

 

 それはもう滅茶苦茶に当たってた気がするのだが。

 

 しかしどうやっても確かめようがない。過去の当選番号を遡って調べることは容易いが、肝心の宝くじの方が手元にないんじゃ仕方がない。もちろん組と番号を覚えているわけもなく、どう足掻こうが確かめることは叶わない。そして、仮に当たっていたとて、なのだ。

 でも、物凄く気になる。過去覚えたことのない感覚に、胸の内がざわざわした。事実をどうすることもできないし、気持ちもどうしたらいいかわからない。私は大きなため息を吐き出して、散らかってしまった部屋を片付け始めた。

 迷宮入りが確定した感情が、私の心に小さく根を張ったのを感じた。

 

 たかだか、当選番号を確認するだけの作業を怠ったせいで、今でも不意に思ってしまう。あれは絶対に当たってた、と。そう思う度、解決の術のない「やっておけばよかった」を増やさないためにも、「思い立ったらすぐに」と自分を戒めることになった。

 三億円は手に入らなかったが、すごく大切な行動理念は手に入った。使えば消えてしまうその程度のものと、生涯を通して肝に銘じる価値ある志。現金か理念か、秤にかけるまでもなくどちらが大切かなんて馬鹿でもわかる。現金だろ。

SUPER BEAVER渋谷龍太

<第31回に続く>

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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