SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第33回「お墓参り」

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公開日:2024/3/27

 それから一週間が経った。なんとも言い難い感情は、私の中で消化不良を起こしていた。気が付くとあの底冷えするような寂しさが蘇る。玄関で靴を履いていると、ポケットで携帯電話が震えた。ディスプレイには藤田の名前。

「もしもし」

「渋谷、今大丈夫?」

「ん、大丈夫だけど」

 藤田の声はやはり浮かないままだった。あの日、xx駅から新宿まで戻って晩飯を食べた時も、その表情や声は沈んでいた。もちろん私にも思うこと、考えることはあった。しかし藤田は一週間ずっとこんな調子だったというのだろうか、玄関の鍵を締めながら私は言った。

「というか、お前が大丈夫かよ」

「渋谷」

「ん?」

「ごめん」

 思い詰めたように藤田は言った。何かを強く噛み締めているようなそんな声だった。一体藤田に、何を謝ることがあるというのだろうか。

「なんでお前が謝るんだよ」

「渋谷」

「謝ることなんてないだろうが」

「そうじゃないんだ」

「お前が気に病んだってどうしようもないだろ」

「聞いてくれ」

「なんだよ」

 そして藤田は、私の、なんだよ、に被せるような形ではっきりと言った。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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