1時間座り続けると死亡率2%上昇! 高血圧、肥満、癌や老けなど、様々なリスクが懸念される/最強脳のつくり方大全①

健康・美容

公開日:2024/4/4

最強脳のつくり方大全』(ジェームズ・グッドウィン:著、森嶋マリ:翻訳/文藝春秋)第1回【全8回】

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最強脳のつくり方大全
『最強脳のつくり方大全』(ジェームズ・グッドウィン:著、森嶋マリ:翻訳/文藝春秋)

長時間座って動かない生活は老化を早める

 座ってばかりの生活は、体への悪影響が大きく、悲惨な結果を招きかねない。

 データモデリングによると、死亡率は着席時間1時間ごとに2%上がり、1日に8時間以上座っていると、8%上昇する。座ってばかりでほとんど動かない生活を長く続けると、心臓病、高血圧、糖尿病、肥満、がんなど、ほぼすべての慢性疾患のリスクが高まる。つまり、ここでも用量効果が見られ、座って過ごせば過ごすほど健康状態が悪くなる。それはさまざまな研究で裏づけられた避けようのない事実だ。年齢も関係がなく、5〜17歳の子供にも当てはまる。

 

 英国では、1日の自由時間のうち1時間以上、中〜高強度の運動をしている子供は、10%もいない。大半の子供がモニターを見つめる活動のほうを選んでいるのだ。身体活動による効果を得るにはそれなりの基準があり、その基準はなかなかハードルが高い。長い時間座って過ごした悪影響を帳消しにするには、毎日、60~75分間の中〜高強度の運動が必要だ。当然、座ってばかりの生活によって、子供の肥満、体調不良が増え、さらに自尊心、交友関係、学力が低下している。

 大人ではなおさらだ。テレビを観ている時間、座っている時間、車に乗っている時間は、すべて心血管疾患による死亡率の増加につながる。それどころかあらゆる病気による死亡率が高くなる。1500人の高齢者を対象にした最近の研究で、1日に10時間座って過ごし、なおかつ、中強度の運動を40分以下しかおこなわない人は、体や健康面で実年齢より8歳老けていることがわかった。

 

 この分野の研究ははじまったばかりだが、それでもすでに、座ってばかりいると体にどんな悪影響が出るのかはわかっている。最近の研究で、大人のテレビの視聴時間、つまり、座って過ごしている時間と、健康への重大な影響に強い関連が見られた。脂肪量の増加(胴囲で測定)、空腹時の血中の脂質の多さ(中性脂肪の値)、インスリン抵抗性(細胞がインスリンを認識できない状態)による高血糖などだ。インスリンの効きが悪くなると、臓器がブドウ糖をうまく取りこめなくなる。それは老化の顕著な特徴だ。

 こういった悪い変化がなぜ起きるのかといえば、長い間じっと座ったままだと、筋肉がほとんど動かないからである。すると、脂肪の分解が減り、中性脂肪が除去されにくくなり、ブドウ糖が臓器に取りこまれず、ブドウ糖刺激によるインスリン分泌が減ってしまう。その結果、体調が崩れる。懸命に運動しても、こういった変化は食い止められないのだ。座ったままだと、体を動かすことによって起きる体内の化学反応が起こらず、それどころか有害な化学変化が起きる。

 さらに気がかりな研究結果もある。長時間座っていると、体内の炎症が増えるのだ。第1章で解説した通り、炎症は老化の指標で、体内の炎症が多ければ多いほど老化が早まる。

 ということは、長い間座っていればいるほど、どんどん老化が進むのだ。人の一生という長い期間で考えれば、座ってばかりの生活の悪影響はかなりのものになる。高血糖によって炎症が起き、動脈硬化が進む。体のさまざまな部分でそういうことが起きるのだ。もちん、脳の中でも。

 

 それだけではない。毎日、モニターの前で1時間座って過ごすごとに、テロメアが7%ずつ短くなる(テロメアは染色体の保護キャップのようなもので、DNAを保護している)。そして、短いテロメアは短命につながる。

 また、炎症は体内の脂肪細胞にも悪影響を及ぼす。蓄えられた脂肪が落ちにくくなって、体重が減らなくなる。それが脂肪細胞の肥大化(FAT flammation)と呼ばれる現象だ。

 そうなると、カロリー制限だけでは対処しきれない。これを解決するには、座ってばかりの生活が引き起こす体内の炎症を減らすこと、長期にわたって活動量を増やすこと、炎症を減らす食べ方(第5章「脳が欲する栄養素」を参照)などが重要になってくる。先に挙げたように、習慣的に有酸素運動をおこなえば、血中の炎症性バイオマーカーが下がる。最大心拍数の80%程度の高強度の運動(ランニングやボートこぎ)を、週に2〜3回、1時間ずつおこなって、同時に普段から体を動かすようにすれば、炎症を大幅に減らせる。

 座りっぱなしの生活で体がぼろぼろになるとしたら、当然、その影響は脳にも及ぶ。それは科学的に証明されている。いくつもの研究で、座りっぱなしの生活がアルツハイマー病の予測因子とされているのだ。また、世界のアルツハイマー病の13%が、運動不足が原因と考えられている。さらに、じっと座っている時間が25%減れば、世界のアルツハイマー病の発症が100万件減ると言われている(現在、全世界のアルツハイマー病患者は約5000万人だ)。

 

 アルツハイマー病との関連の原因も、わかりはじめている。どうやら、じっと座ったままでいると、記憶を司る脳の領域が縮むらしい。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームは、45〜75歳の35人を対象に、1週間の身体活動量と座っている時間を調べた。次に高解像度のMRI検査で、新しい記憶が形成される内側側頭葉(MTL)を調べた。すると、座りっぱなしの生活とMTLの減少に明らかな関連が見られた。それは中高年では認知低下や認知症の予兆だ。

 さらに、たとえ身体活動量が多くても、長時間じっと座っていることによるMTLへの悪影響は消えないこともはっきりした。正直なところ、この研究では、座ってばかりで動かないと、MTLが減ると証明されたわけではない。それでも、座っている時間が長いほどMTLが減る傾向にあるという事実は、貴重な指標になる。

<第2回に続く>

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