「この時代を生き抜くには」内田 樹×名越康文×橋口いくよ 勝手に開催!国づくり緊急サミット

内田樹

2014/3/6

思想家・内田樹、精神科医・名越康文、小説家・橋口いくよの三氏が語り合うダ・ヴィンチ本誌人気連載「勝手に開催! 国づくり緊急サミット」。この連載をまとめた書籍化第3弾『本当の仕事の作法』が、いよいよ3月6日(金)に発売されます! そこで、単行本未収録の特別鼎談を、本誌とダ・ヴィンチニュースだけに特別公開いたします!!

文=橋口いくよ 写真=川口宗道

内田 樹

橋口 「若い子たちに蔓延しているのが、反知性主義」というお話を、前回の最後で内田先生からうかがって、実は、いまだに動揺しています。

名越 僕たちぐらいの世代からじわりじわりと始まってきたことですね。今はそれがもっと深刻なことになってきてしまった。

内田 このあいだ授業で「アルベール・カミュの話をしますから、とりあえず『異邦人』だけでも読んできてね。新潮文庫で、日本中のほとんどの本屋で売ってるから。薄い本だし、2時間ぐらいで読めると思います」って言ったの。で、次の授業の冒頭で「『異邦人』読んできた人いますか? 手を挙げてみて」って訊いたら、一人もいないの。それで火が点いちゃって、それから50分間、口から炎を噴くような説教しちゃいましたよ。

橋口 えっ、宿題ですよね。しかもそこまで丁寧に伝えてらっしゃるのに、ひとりもいないんですか?

内田 問題は2つあるの。1つは課題を無視して、読んできてないってこと。もう一つは読んできた学生が手を挙げないってこと。

橋口 あーっ! なるほど。

名越 僕も前に、自分が授業している時にそういうこと、ありました。

橋口 ちゃんと読んでいても、言い出せないわけですね。そう考えたら、私の頃もそういうことってありました。「勉強なんてしてない」って顔を友達にしなきゃいけない雰囲気。それなら本当にしなきゃいいのかって考えになってきちゃうんだけど。

内田 知的なことに興味があると思われると、まわりからいじめられるんじゃないかって恐怖があるんだよ。

橋口 知的なことってどこからがそれに該当するんですかね?

名越 ちょっと歯ごたえのある本を読むこととかはそれに入るんじゃないかな。

橋口 音楽は?

名越 だって、最近はわかりやすい歌詞のものばかりでしょう。そういうものは、知的ではないと判断されて、許されるんじゃないかな。要するに、わかりやすいもの以外は「素直じゃないんじゃないの?」っていう言い方をされてしまうんですよ。

橋口 映画はどうでしょう。あ、単館映画は許されないのかな。

名越 ダメと判断されるんじゃないかな。

橋口 単館映画って、私の世代には、お客さんも入っていたし、当時すごくおしゃれなイメージがあったんですよ。知性とおしゃれさが同時にあるって感じで。

名越 そういうものが、この5年ぐらいで一気にわーっと反知性主義的考えに押されてしまいましたよね。

内田 昔は、高校生大学生が一番とんがった映画観てたけど、いまはまるで違うね。

名越 もう今は、そういう映画があることすら、若い世代が認知できなくなってきてるんです。情報として入ってこないんですよね。