現状維持がモットーの人生が一転する、年下美男子との年の差ラブコメ!『転がる女と恋の沼』/マンガPOP横丁(72)

マンガ

公開日:2021/8/13

転がる女と恋の沼
『転がる女と恋の沼』(芥文絵/祥伝社)

“現状維持”というのはなかなか容易なことではない。それは仕事においても生活においても。だが有難いことにこの連載が70回を超えることができた。今となっては完全にはりまのライフワークと化している。以前にも書いたが、この連載に関しては、はりまが何か不祥事を起こさない限り200回、500回、そして1000回どころか未来永劫“維持”をしていくのが私の強い希望だ。崩れるなよ……!(あ、編集部の皆さま、今後も何卒、なーにーとーぞーよろしくお願い申し上げますっ)

 さて話を戻そう。現状維持はいつか崩れてしまうものなのかな、と今回の作品で読みながら考えさせられた。例えば同じ崩れるでも、そのあとがとんでもないくらいに不幸の連続となるような“大マイナス”はもちろんイヤだが、いい方向に生活が賑やかになっていく“プラス”なら崩れてもいいかもしれない。今回ご紹介する『転がる女と恋の沼』(芥文絵/祥伝社)は、そんな現状維持の生活から“プラス”甘ずっぱい方向へコロコロと変わっていく女性が主人公の日常を描いた物語だ。

advertisement

 彼女の物語はとんでもない衝撃の出来事から始まる。実家暮らしをするアラサーOLの木村栞(きむらしおり)に災厄が襲ってきたのだ。それは、実家が火事に遭っていたのだ。しかも栞にとって記念すべき31回目の誕生日に……。数時間前に催された仲のいい友人との自身の誕生日会でのこと。“現状維持”をモットーとしている栞が改めてこれからもそれができる宣言をするも友人にツッコまれる。ちなみに栞の現状維持の全容はというと、9年在籍している居心地が最高の職場に勤め続けることと、推しメンのいるアイドルグループ「スパイラル」を愛でるドルヲタ実家暮らしライフである。もちろんツッコまれたことに関しては頑なに譲らない栞。だがこれをつい先ほど誓った後に、実家の火事である。この家の中には、長年集め続けてきたアイドルグッズが当然詰め込まれているわけで……。絶望を味わうと共に、現状維持の生活が強制的に崩れ、栞の人生が一転する瞬間であった。

 ついさっきまで実家暮らししていた栞。当然のごとく帰宅するのは困難な状態。そこで、栞は姉夫婦の家でしばらくの間お世話になろうと思ったら強く拒絶され、なんだかんだで“ひとりで強く生きろ宣言”(勝手にこちらで命名)を下され、最終的にひとり暮らしをする事態に。そして引っ越しの作業を一通り終えてコンビニへ買い出しに行った帰り、ひとり暮らしの家があるマンションのエレベータに乗ると、後ろから頭をフードで覆いマスク姿の若い男性も乗ってきた。しかも目的階が同じ。なんか気味悪いと栞が感じ始めたその時、突然とある家の玄関の扉が開き、男性と同じ世代の可愛らしい女の子が彼を出迎えていた。そして明かされるその姿……それは実家が火事になる前、コンビニでマズイ思いをした時に出逢ったアイドル級の美貌を持った、明らかに年下の男の子だったのだ。そして彼にイチャイチャしだす女の子。それをジッと見る栞に嘲笑うかのような表情を見せて彼と一緒に部屋へ入っていった。自宅に入った瞬間、栞は発狂しまくり! 望んでいなかった生活の変化に心は荒む一方。のちに彼の名前は井上紺(いのうえこん)と知り、しかしまさかこの紺にたくさんキュンとさせられる出来事で溢れた日常に変わっていくなんて、この時これっぽっちも思っていなかった……。

 アラサー女子とお隣に住む年下の男の子との年の差ラブコメ。そんなお相手の男の子・紺とは世代が違うため、栞は彼のいろいろな感覚について行けず終始てんてこ舞いでイッパイイッパイ。そんな紺は自然と栞の心を包み込んでくれる存在へとなっていくのだが、その全貌はぜひ本作で!

 作品のタイトルにある通り、転がり出した先にあるのは一体……。はりまの心にも刺さる自虐な迷言も盛りだくさんなこの作品。いろいろと心動かされて楽しめます!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

あわせて読みたい