「好きなものに、嘘をついちゃいけない。」学校の自己紹介で、自ら間違いを訂正すると…/片岡健太(sumika)『凡者の合奏』

文芸・カルチャー

更新日:2022/7/20

 なんと先生もミスチルのファンだったのだ。放課後に先生と話していると、僕が虫食い状態で集めていたミスチルのCDコレクションと、先生が持っていたコレクションとが、凸と凹のようになっていることが発覚した。その翌日、僕は『Atomic Heart』というアルバムを先生に貸して、先生は『Versus』を僕に貸してくれた。

『メインストリートに行こう』という曲にかけて「川崎のメインストリートって、どこなんだろうね」という話を二人でしたり、『Over』の歌詞に書かれている「『顔のわりに小さな胸』って、それはどんな顔の人なんですか?」と僕が悪気なく聞いて、先生を困らせたりした。

 楽しそうに話している僕たちのまわりには、気付けば少しずつ人が寄ってくるようになった。当時の年齢にしてはだいぶ背伸びした趣味ではあったが「何やら楽しそう」という空気は、年齢もネガティブな印象も溶けていくのだと知った。

 好きなことの話をしている人の顔が好きだ。

〝好き〟を介せば、心の距離は一瞬で縮まる。

 どれだけ燃えていても、どれだけ凍っていても、きっと人肌を覗かせてくれる。

 そう信じて、今日も何気なく聞いてみる。

「あなたは何が好きですか?」

<第6回に続く>


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