百鬼園事件帖
「百鬼園事件帖」の関連記事
芥川においてけぼりにされた百閒は何を思うのか『百鬼園事件帖』三上延インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年11月号からの転載です。
「内田百閒事件帖があったら面白いですよね」。飲みの席での編集者のそんな一言から、三上さんの最新作『百鬼園事件帖』は始まったという。内田百閒は、三上さんの大好きな作家だ。「ビブリア古書堂」シリーズの第8作『ビブリア古書堂の事件手帖〜扉子と不思議な客人たち〜』にもその短編『王様の背中』が登場する。
取材・文=松井美緒 写真=TOWA
「百閒は高校の頃から熱心に読んでいました。とくに『冥途』や『旅順入城式』などの怪奇ものが好きでした。百閒は名文家としてもよく知られています。物事の気配や何か起こったときに比喩、そういう表現が非常に上手いんです。自分が作家になるときにも影響を受けました。というか、こんなふうに書けたらいいなと思います」 『百鬼園事件帖』の舞台は、昭和6年冬から8年春までの東京。大学生・甘木は、神楽坂の「不純喫茶・千鳥」で、彼の通う私大のドイツ語教授だった百閒と出会う。背広がもたらす不思議な夢(第1話「背広」)、千鳥の謎の女給と人語をしゃべる猫(第2話「猫」)……二人が遭遇する…
2023/10/10
全文を読む関連記事をもっと見る
百鬼園事件帖 / 感想・レビュー
starbro
三上 延、2作目です。本書は、内田百間文豪ミステリ幻想譚の連作短編集でした。 オススメは、『背広』&『竹杖』です。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000013271.000007006.html
2023/10/03
ジェンダー
帯に書いてるミステリーといって言いのかはさておき怪異というのは間違ってないかなぁ!読み始めてたら世にも奇妙な物語をイメージしてしまった!時代背景や街並みが何となく想像出来る。こういう時代だったのかって知れてるし全然怖くないから気軽に読める本。先生として接してるだけではわからない魅力と懐の良さ。主人公と先生の教え子とのやりとりも良かった!ドッペルゲンガーを自分だったらどう解釈しながら読むと楽しく読める。また今一緒にいる家族や友人。亡くなった故人を大切にしないと行けないと改めて思わせてくれる作品。
2024/04/03
パトラッシュ
ビブリア古書堂シリーズの作者ということでミステリ物かと思ったら、内田百閒教授の教え子になった学生がネバーランドさながらの不可思議な現象の数々を体験する世界が展開していく。漱石の遺品の背広に霊が宿っていたり、芥川のドッペルゲンガーが出現したりと着想はユニークだが、せっかく百閒が狂言回しなのに何を語りたかったかわからず、515に至る不安なテロの時代の空気も漂ってこない。もっと物語の軸を明確にし、百閒の鉄道や筝曲趣味を題材に少し前の時代が舞台の『鬼滅の刃』風なダークファンタジーとして設定したら面白かったのでは。
2023/11/11
KAZOO
「ビブリア古書堂」シリーズを書かれている三上さんが新しいシリーズを始めてくれたようです。内田百閒を主人公としてその学生やカフェーの人物たちを配置した私にとっては楽しい物語です。4つの短編が収められていて不可思議な事象などを題材として事件を解決していきます。芥川龍之介が出てくるドッペルゲンガーの話が一番印象に残りました。また内田百閒の家での話でレコードが出てきたので「サラサーテの盤」について話があると思いきや今後の愉しみですね。
2023/11/08
ちょろこ
不思議を味わい尽くした一冊。一言で言うと美味だった。昭和初期を舞台にした内田百閒こと内田榮造先生と学生の、それはそれは世にも不思議な物語。背広が、猫が…偏屈先生の周りで起こる怪異に学生の甘木と磁石のように吸い寄せられた。不思議な時間と小さな笑いを味わい尽くし、うなじが粟立つようなゾワリとした後味までまた美味。第三話はこれぞこの世のものでないるつぼ。ぐるぐる吸い込まれそうな感覚が面白い。第四話は桜の季節の哀しみと怪異の溶け合いが醸し出す儚い雰囲気がとても好き。数々の不思議の続きを夢の中で味わいたいぐらい。
2023/10/18
感想・レビューをもっと見る