KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

未明の砦

未明の砦

未明の砦

作家
太田愛
出版社
KADOKAWA
発売日
2023-07-31
ISBN
9784041139806
amazonで購入する Kindle版を購入する

未明の砦 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

イアン

★★★★★★★★☆☆労働問題を扱った太田愛の社会派長編。王手自動車メーカー「ユシマ」の非正規作業員・矢上らは、同じ工場で働く玄羽に誘われ笛ヶ浜でひと夏を過ごす。そこでの出来事が彼らの運命を大きく変えるとも知らずに…。冒頭の逃走劇は上質なミステリを予感させるが、物語の本質はそこにはない。現在日本が抱える歪な労働体系や大企業と癒着する政治・メディア。それらに対する憤りこそ著者が伝えたかった想いなのだろう。「歯車」の意地を感じる良作だが、フィクションと割り切って映像化するには、あまりに問題を深く抉り過ぎている。

2023/10/16

hirokun

★4 600ページを超える長編でしたが、あまり大きく間延びすることもなく読み切りました。過去からの労働法制の推移、時々の財界、占領軍の対共産主義対策、企業の労働環境についてもこの作品から学ぶことが出来、ぜひ若い労働者の人たちにも読んでほしいと思いました。最近の流れとして、この作品にはあまり触れられていませんでしたが、外国人労働者の受け入れ問題も今後の労働状況に大きな影響を与えると思います。又、定年延長と絡めて、年功序列から職務給、ジョブ型採用への移行も労働者にとって大きな影響を与えることと思います。

2023/10/07

のぶ

とても読み応えのある群像劇だった。大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平の4人を中心にした物語。彼らは皆、日々を生きていくだけで精一杯の非正規雇用の労働者。自分達のおかれた状況が、政治家や大企業幹部の都合の良いルールにより作り出されたかを知る。それは現在の日本の社会問題そのものであり、小説の中だけの話とは思えないリアルさが伝わってくる。話の本筋は、その若者達が大企業に一見無謀に思える闘いを挑むが、企業からの妨害に加えて公安にも狙われる。読後には不思議な爽やかさを感じた。

2023/08/23

KAZOO

太田さんの最新作です。太田さんは「相棒」シリーズの脚本を書かれていた時から反権力的な作品を書かれてきましたが、これもその作品と同系列です。最近はストライキ(先日久しぶりに西武そごうが行いましたが)などという言葉も縁遠くなってさらに労働者という認識も少なくなってきていますが、ここでは期間工、派遣工という人物を主人公にしています。その他にエリート警察官僚、政治家が出てきたりして楽しませてくれます。映像化されるといいですね。

2023/10/18

モルク

大手自動車メーカーの期間工、派遣工など非正規工員四人がなぜか共謀罪で公安に逮捕されようとしていた。1本の電話が彼らを救う。公安、所轄の刑事、週刊誌記者、弁護士…色々な人が登場し登場人物表といったり来たり、時系列を把握したりしかも600ページ超え、先は長いと最初は進みが悪かった。4人が既存のものではない労組を作ろうとし、ブラック企業に待遇や地位改善を求め立ち上がる。それを潰そうとする組織、先を読み立ち回る姿は心踊る。文章から映像が浮かびさすが脚本家さんの作品だ。私の中では今年上位にランクイン。

2023/12/04

感想・レビューをもっと見る