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「Q」のおすすめレビュー
「このミス」第1位の『爆弾』著者・呉勝浩の最新刊。『悪人』×BTS×『AKIRA』のイメージがもとにある恋愛小説
『Q』(呉勝浩/小学館)
ページをめくる手が止まらない、という表現は本書のような作品のためにある言葉だ。呉勝浩氏の新刊『Q』(小学館)を読んでそう思った。3作連続で直木賞候補になった呉氏は、昨年の『爆弾』でも広い層から支持された。同作は『このミステリーがすごい! 2023年版』、『ミステリが読みたい! 2023年版』の2誌で1位を獲得。驚異の二冠を達成した。同作は個人的にも愛読しており、否が応にも次作への期待が高まっていた。果たして届けられた『Q』は、予想を遥かに超える超弩級の傑作である。
話は千葉県富津市から始まる。物語の核を成すのは、血の繋がっていない3人の姉妹と弟だ。過去に暴行事件を起こし、現在は富津で清掃会社に勤めるハチこと町谷亜八(以下、ハチ)。東京の企業でキャリアウーマンとして大活躍する、ロクこと睦深(以下、ロク)。そして、ふたりが愛情を注ぐ弟、キュウこと町谷侑九(以下、キュウ)。キーパーソンとなるキュウは、ロクとハチから寵愛されて育った。
ストーリーを牽引していくのは、眉目秀麗でダンサーとして天賦の才を持つキュウ。カリスマ的な存在感…
2023/12/22
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Q / 感想・レビュー
starbro
呉 勝浩は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。著者の最新作は、ダークアイドルアヴァンギャルド家族小説巨篇でした。タイトルからウルトラQか007のQをイメージしていましたが、全く違いました。昨年読んでいたら2023年のBEST20候補だったかも知れません。QのLIVEを観てみたい♪ https://www.shogakukan.co.jp/pr/q/index.html
2024/01/10
パトラッシュ
圧倒的な存在が放つ強烈な光を浴びた周囲は、驚愕、憧憬、嫉妬、憎悪など影を浮かび上がらせる。カリスマ的なダンスの天才青年を前にして、ある者は彼の才能を世界に広めようと動き、ある者は自分の届かぬ高みに絶望のあまり殺意を抱き、また自分の利益に利用しようと図ったりと様々な状況を発生させる。そんな無数の思惑が無許可の移動配信ライブというイベントに集約され、ただならぬ不穏な空気に満ちたドラマが展開していく。疾走感あふれるストーリーは面白いのだが、戦争や感染症に混乱する世界をダンスだけでそこまで動かせるのか疑問に思う。
2023/12/04
hiace9000
目も眩む白熱に曝された暗夜に解き放たれる"Q"の空なる囁きに、抑圧を抱える世の民は酔い、感染し、侵食され、やがて覚醒していく。泥沼で生まれ、ドス黒く華やぐ芸能ビジネスと狂信者たちの愛憎で、真の偶像的カリスマへと祀り上げられる突然変異の妖狐、町井侑九。狂っているのは、時代か社会か、それとも人間かー。 今作でも過激で社会に先鋭な刃を突きつける呉さん。「爆弾」やら「テロ」やら「圧迫」やら…社会の閉塞感と肌感的にすぐ傍にある社会の違和感や不安感に、あの手この手でカウンターを繰り出し、読み手は顔面を打ち砕かれる。
2024/02/04
ずっきん
手にするとこの分厚さである。もう喜びしかなかった。けしてわたしを裏切らない物語が詰まってるのを知っているから。視覚映像オンチのわたしにキュウの美しさを届けることができるのは文章だけである。小説だからキュウの妖艶さ、ロクの頑迷さ、ハチのもがき苦しみを体験できるのだ。行く末など想像おぼつかず、ただただ息を呑みページを捲りつづける幸せよ。読む喜びとは騙されることだ。なんて心地よい嘘なんだろう。沼だ。どっぷり浸かったままでいたかった。残りページを減らし続けるわたしの興奮と絶望。その葛藤を、あなたもさあ味わえ。
2023/12/06
はにこ
ひとを魅了する侑九。それに翻弄される人々。守るために人を殺したり、世の中にだすために手段を選ばなかったり。そこまで熱中したことがないのでイマイチピンとこない。Qという存在は太陽というより人を飲み込んでしまうブラックホールのように感じた。めちゃめちゃ分厚い本だったけど、軽い感想しか持てなかったな。
2024/02/17
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