素敵な圧迫
「素敵な圧迫」のおすすめレビュー
常軌を逸した思考回路に戦慄! 「ぴったりくる隙間」を求め女性が辿り着いたのは? 押し入れの隙間、冷蔵庫… 『爆弾』『スワン』呉勝浩氏が放つ超弩級のミステリー
『素敵な圧迫』(呉勝浩/KADOKAWA)
渇望の果て、ようやく欲するものに出会えたら、もう身の破滅など気にしていられない。ドボドボととめどなく溢れ出る欲望を、どうしたら制御できるだろうか。まっとうな道などいくら外れても構わない。そんなギラつきが、人間にとんでもない事件を巻き起こさせるのだろう。
天秤の片方に、人生の破滅がのっている——帯に書かれたそんな一文が人目を引く本が『素敵な圧迫』(呉勝浩/KADOKAWA)。『爆弾』『スワン』で知られる気鋭・呉勝浩氏が放つ超弩級のミステリー短編集だ。呉勝浩氏の描くミステリーは、人間の本性を引きずり出すかのような描写力と衝撃の展開が魅力的だが、それは短編でも顕在。ページをめくれば、人間という生き物の深奥を覗き込んだような気分にさせられる。
どういう時に人間の本性が現れるか。それは、身に危険が迫った時ではないだろうか。この短編集に登場する人々は、誰もが「破滅」のすぐそばにいる。たとえば、表題作「素敵な圧迫」に登場するのは、「ぴったりくる隙間」を求める広美という女性だ。あなたは、小さい頃、押し入れの隙間に体を滑…
2023/8/30
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素敵な圧迫 / 感想・レビュー
starbro
呉 勝浩は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。バラエティーに富んだ魅力的な短編集、オススメは、表題作『素敵な圧迫』&『論リー・チャップリン』です。 https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322303000843/
2023/09/15
hiace9000
6短編それぞれに味わいは異なるものの、小川哲さんの『嘘と正典』を読んだときのような、えもいわれぬ不思議さと、穏やかではない不気味さを感じるのはなんだろう。足元から滲みだしてくる仄暗い狂気や、何処かが日常とはズレた違和感は、決して心地よいとは言えないが、突き落とされる闇を味わうイヤミスでもない。これはそうー、もしや「圧迫」感ではないか。書名の"素敵な"ではない方のそれに近い。様々なシチュエーションを現出させ、登場人物に憑依して読み手を作品世界でじわじわと締めつけてくる文学「圧」には、降参するしかないだろう。
2023/10/09
ケイ
このミスで話題だった「爆弾」がとてもよかったので、新作も手に取った。短編集だと雰囲気がガラリとかわる。緊迫感や手にあせ握る感じの代わりにザラりと触れてくるように思った。「素敵な圧迫」は、閉所恐怖症の私にはその状況を想像しただけて息が詰まった……とならず。誰かの身体が与える圧迫感が想像できず。だからこだわる理由も難しい。どれも一昔前の設定のように思えたのは、男女の関係や仕事の仕方のプロトコルが今ではないからかな。次はまた長編を読んで見ようと思う。
2024/02/08
hirokun
★2 本の帯には、超弩級のミステリ短編集とあるが、私の感性に柔軟性がないためか作品を楽しむことは出来なかった。同じく本の帯に、物語に翻弄される快感とあるが、これまた残ったのは不快感のみ。自分の頭の固さ、物事をつい枠に嵌めて考えてしまう思考癖など読書を通じて変えていきたい部分であるのだが、現実は極めて難しい。ほかの読者の方々の書評を読み、少しでも頭を柔軟にして読解力を高めたいと思った一日であった。
2023/10/03
とん大西
なかなかの世界観。没入しきれず斜め読みの話しもあったっちゃぁあったが、迷いのない筆致が狂気と滑稽のカオスを醸し出す。ほどよくぬるい「論リー・チャップリン」の可笑しさに安堵し、歪なパラレル「パノラマ・マシン」の怪奇幻想に魅了される。書きすぎないところも良さげでね。
2024/02/04
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