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チワワ・シンドローム

チワワ・シンドローム

チワワ・シンドローム

作家
大前粟生
出版社
文藝春秋
発売日
2024-01-26
ISBN
9784163917986
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「チワワ・シンドローム」のおすすめレビュー

「チワワテロ」と呼ばれる事件の真相は? 「自分は弱い」アピールがはびこる現代の炎上社会をリアルに描き出す

『チワワ・シンドローム』(文藝春秋)

 道行く誰かに、知らないうちにチワワのピンバッジをつけられていたら、どう思うだろう。かわいい、けれどちょっと怖い。やろうと思えばバッジの針で刺すこともできたはずだし、何より、意図がわからなすぎて、ぞっとする。大前粟生氏の小説『チワワ・シンドローム』(文藝春秋)は、首都圏を中心に日本各地で謎の「チワワテロ」が起きたのをきっかけに、好きな人と連絡がとれなくなってしまった新卒3年目の会社員・琴美が主人公。高校時代からの親友で人気インフルエンサー・ミアとともにその行方を追う本作は、これまで丹念に人と人とが向き合う姿を描いてきた大前氏にとって、初のミステリー仕立ての小説である。

 琴美が思いを寄せていた新太とはマッチングアプリで出会った。旅行に行く約束までしていた彼が、〈これから、会わないようにしよう。僕のことはもう信じないで〉という謎の言葉を残して消息を絶ったのは、琴美が、新太もチワワテロに遭っていたことを指摘したあとだ。新太はSNSを一切やっていないし、フリーランス業だから会社に問い合わせることもできない。手がかりが…

2024/1/26

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「本当に傷ついている人たちに向き合わなければいけない」著者初のミステリー仕立てとした新作小説『チワワ・シンドローム』に込めた、現代社会に投げかける思いとは? 大前粟生さんインタビュー

 ある日、知らない間にチワワのピンバッジがつけられたという呟きがネットに溢れた。この奇妙な事件は「チワワテロ」と呼ばれ、主人公・琴美の想い人もテロの被害者となり失踪する。失踪と「チワワテロ」との関係は――。若者たちの価値観を描き出し、同世代を中心とした読者の支持を集める大前粟生さんの新作『チワワ・シンドローム』(文藝春秋)が2024年1月に刊行。炎上時代をリアルに描き出した本作についてお聞きしました。

『チワワ・シンドローム』(大前粟生/文藝春秋)

――デビュー以来、大前さんは作品を通じて、人の弱さや傷つきに真摯に向き合ってきたと思うのですが、本作はこれまでとはアプローチが異なる印象を受けました。

大前粟生さん(以下、大前):これまでの作品と比較する意識はなかったのですが、作風を広げてみたい、という思いはありました。世の中がどんどんきな臭くなっていく、そのスピードにこれまでのやり方では追いつけない。小説が現実に負けてしまうというのを感じていて。

――きな臭く、とは?

大前:各地で戦争が起きていることもそうですが、これほど多くの人が警鐘を鳴らし、対策をとっ…

2024/2/6

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チワワ・シンドローム / 感想・レビュー

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夢追人009

非常に現代的なストーリーでZ世代の若者にアピールする小説ですね。殺人事件を捜査する刑事も出て来ない仮想現実の物語のように思えますが一歩間違えれば自殺にも繋がる危うさを孕んでいるので厄介ですね。本書を読んで実感したのはヒロインの琴美のように自分を信じて他者に依存され過ぎずに物事を冷静に判断して生きる事の大切さですね。現代社会を生きる若者たちには気を強く持ってネット社会に安易に騙されぬようにして欲しいですね。著者の描く物語の示す道の方向性は正しいと思いますので今後とも注目したいですね。#NetGalleyJP

2024/04/07

ゆのん

自分の事を弱い人間だと思っている琴美。そんな琴美を『そのままの弱くて可愛い琴美で良いんだよ』と寄り添う親友・リリ。出会った男性が失踪し、世の中はチワワテロなるものに沸き立っている。男性の行方や、テロの謎に迫っていくうちに琴美の中でリリとの関係に違和感が…。人間は機械じゃないから強い部分も弱い部分もあって良いと思った。弱い自分でいたくても強くならざる得ない環境だってあるだろう。大切なのは自分が自分を好きかという事なのでは。ミステリ色もあり、スピード感もあってかなり楽しめた。

2024/01/08

もぐたん

強さからの解放の象徴がチワワ。弱くなりたいんじゃなく、強くなりたいのでもない。自分は自分のままで愛されたい、認めてもらいたいということを軽くミステリ仕立てに表現している。軽く、あくまでサラッと。後半明らかになるリリの孤独が切ない。タイトルに興味を引かれた私も弱さに憧れているのかもしれない。★★★☆☆

2024/02/06

よつば🍀

人の強さや弱さは何を持って判断するんだろう。著者の既読作品『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『きみだからさびしい』でも感じた孤独と生きづらさ。本作でもSNSに翻弄され人との関係性に葛藤する人達が登場する。主人公は大手人材サービス会社の人事部で働く田井中琴美。尊敬する親友の穂波実杏は「ミア」の名で活躍するインフルエンサー。親友とは言いながらも琴美はミアに庇護されているような存在だ。チワワを弱く可愛いものの象徴と捉えたエモーショナルな作品だが、チワワだって時に牙を剥く。読みながら自立の文字が何度も浮かんだ。

2024/02/25

olive

マッチングアプリで知り合いいい感じになりそうだった男性が、〈チワワテロ〉と呼ばれる、知らない間に “チワワのピンバッジ” が付けられるという奇妙な事件の直後に姿を消してしまった。琴美は、親友で「全肯定インフルエンサー」のミアとともに、彼の失踪とチワワテロの謎を追いはじめる。強さではなく、弱さのゆがみに着目したのも上手い!となったが、その弱さの象徴がチワワなんて、これまた上手すぎる!!そんでもってミステリー仕立てで、先が気になる仕掛けにもワクワクした。とにかく面白かった♡

2024/03/20

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