ホラー作家・岩井志麻子が語るオトコとオンナの“恐怖のツボ”|夏のホラー部第3回
公開日:2015/8/22
――いつ頃から、この人は変だと気づいたんですか?
岩井:決定的になったのは、某お洒落系ファッション誌の取材でしたね。待ち合わせの時間になっても現れないので、心配して電話してみると、「先に行っててください」というんです。体の具合でも悪いのかなと思いながらインタビューを受けていると、「お待たせ~」とバリバリに厚化粧を決めたLちゃんがやって来て。
――ファッション誌の仕事だからですね。
岩井:インタビューにもぐいぐい割り込んできて、いかに自分がモテるかって話を延々とするんです。その時に、編集者やライターがはっきりと「あの人は変です」って言ってくれて。「あれ、志麻子、ひょっとして長い間おかしな世界にいたんじゃないの?」と初めて気がついたんですよ。そこから、あれもこれもおかしいと繋がってきて。後で聞いたら、みんなうすうす変だと思っていたけど、わたしが信頼しているので言えなかったって。
――Lさんの嘘は目的が分からないのが怖いですね。
岩井:その場で「すごーい」って言われて、注目を浴びることが嬉しいんです。よく風俗嬢やAVにもいるんです。わたしは元CIAのエージェントで、年収一億のアメリカ人と結婚したけど、退屈になったからAVの世界に飛びこんだとか(笑)。Lちゃんはわたしのマネージャーになったことで、嘘の世界に近づけたわけですけど、そうなると俄然やる気をなくすんです。夢は夢のままにして、嘘をついていた方がよかったんじゃないかな。
――今は何をされているんですか?
岩井:電話専門の占い師です。電話の占いって一分しゃべって幾らという世界なんですよ。だからタチの悪い占い師になると、「うーん……」と言って時間を引き延ばす。占い好きの集まる掲示板を見ると、Lちゃんは「うーん、うーん、しか言わない」って書かれてます(笑)。