平野レミが「かきのおいしい季節」を夫に尋ねたら…/エプロン手帖

暮らし

公開日:2023/2/22

私の料理の原点は、やっぱり母の味でした――
エプロン手帖』(平野レミ:著、和田誠・舟橋全二:絵/ポプラ社)は、平野レミさんが、28年前に出した書籍を大幅にリニューアルしたエッセイ集です。51の食材にまつわるエッセイと、レミさん撮影によるお料理の写真、レシピがエッセイとともに楽しめます。料理を盛る器にこだわり、背景に夫の和田誠さんのポスターや自身のブラウスを敷くなど、スタイリングもご自身で手がけたそう。リニューアルした本書から、厳選した8つのエッセイとレシピをご覧ください。

【30日間無料】Amazonの読み放題をチェック >


エプロン手帖
エプロン手帖』(平野レミ/ポプラ社)

かきのおいしい季節

 かき(柿ではなく牡蠣のほう)の殻つきをたくさん鳥羽から段ボール詰めで送ってもらって、うちでワインつきかきパーティをしたことがある。楽しかったけれど、かきの殻をむくのが大変。これは男の仕事だと、かきの殻専用ナイフと普通のナイフを夫とお客さんに渡してみんなでむいてもらった。意外にむずかしくて殻がボロボロと身に入ってしまう。一人、コツを知っていて上手なお客さんがいて、いつの間にか男たちはその人にむくのをまかせ、みんな食べたり飲んだりするほうにまわっていた。上手な人が気の毒だった。

 かきはRのつく月、セプテンバーからエイプリルがおいしく、特にERのつく、セプテンバーからディセンバーがいいという。「どうしてだろう」と夫にきいたら、夫は「かきはOYSTERだから」と答えた。「ああそうか」と私は納得したが、よく考えたらそれでは本当の理由はわからない。

 かきはやっぱり殻つき生にレモンしぼって食べるのがおいしいと思うけど、とびきり新鮮なものでないといけない。そこでかき料理。

 お好み焼きの生地(ボウルでとき卵と小麦粉と水と塩を混ぜる)の中に生がきと長ねぎ、春菊、紅しょうがを入れてよく混ぜ、お好み焼きの要領で焼く。ポン酢またはケチャップに辛子酢を混ぜたたれをつけて食べる。

 かきの春巻き。春巻きの皮に、小粒の生がき、せん切りキャベツ、せん切り玉ねぎ、もやし、オイスターソース、ごま油、砂糖、塩、胡椒を混ぜて包み、水溶き小麦粉をのり代わりにして端をとめる。油で揚げ、レモンケチャップや辛子醬油で食べる。(次のページに続く

エプロン手帖
イラスト=舟橋全二

『エプロン手帖』をAmazonで読む >

あわせて読みたい