平野レミがルーツを探す旅でアメリカへ「レミ流・焼き豚」/エプロン手帖

暮らし

公開日:2023/2/23

私の料理の原点は、やっぱり母の味でした――
エプロン手帖』(平野レミ:著、和田誠・舟橋全二:絵/ポプラ社)は、平野レミさんが、28年前に出した書籍を大幅にリニューアルしたエッセイ集です。51の食材にまつわるエッセイと、レミさん撮影によるお料理の写真、レシピがエッセイとともに楽しめます。料理を盛る器にこだわり、背景に夫の和田誠さんのポスターや自身のブラウスを敷くなど、スタイリングもご自身で手がけたそう。リニューアルした本書から、厳選した8つのエッセイとレシピをご覧ください。

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エプロン手帖
エプロン手帖』(平野レミ/ポプラ社)

レミ流・焼き豚

 カリフォルニア州の次にメリーランド州に行った。私の祖父の先祖はスコットランド人で、二百年ほど前にアメリカに渡ってきた。着いた港がメリーランド州アナポリス。私はルーツを探す旅をして、アナポリスに行ったのだ。祖父の名はヘンリー・P・ブイ。アナポリスのそばに、ブイという町がある。メリーランドの知事をしたブイ一族の一人の名をとったもので、その人の孫がブイの町に住んでいる。孫といってももうおじいさんだけど、私の遠い遠いいとこになる。その人に会った。彼は農場主で、見渡すかぎり自分の土地。素敵な娘さんがいるが、町には出ずに敷地で野菜を育てて暮らしているという。家には燻製室があって、敷地内で育った豚を丸ごと燻製にして、地下で貯蔵している。全体に煉瓦造りの燻製室だった。

 さて、スケールはうんと小さくなるけれど、今度は私の豚の話。

 私流の焼き豚の作り方。鍋に湯を沸かし、ウーロン茶か紅茶大さじ山二杯と豚ロース肉のかたまり五百グラムを入れ、一時間ほど煮る。別の小鍋で醬油二分の一カップ、みりん、酒各四分の一カップをさっと煮立たせ、ゆでた豚と一緒に保存袋に入れ、半日から一晩おく。温かいゆで豚とたれが合体して、火にかけなくても時間が調理してくれる。保存袋から空気を抜くのがコツ。少量のたれでも肉全体を包み込んでくれる。薄切りにした豚にたれをつけて食べる。

 もう一つおいしい豚料理。豚ロースのかたまり(塩、胡椒、スパイス類をすり込んでおく)をにんじん、玉ねぎ、セロリ、パセリなど香味野菜を敷いた鍋に入れ、ワインをふって、ぴっちりふたをして、はじめ中火、蒸気が上がったら弱火に。普通の鍋なら二時間ほど、圧力鍋なら三十分ほどでできる。鍋の底の汁(野菜と肉汁の合わさったもの)を濾して、マヨネーズ、サワークリーム、マスタードなどを加えて弱火にかけ、ソースにして食べる。(次のページに続く

エプロン手帖
イラスト=舟橋全二

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