平野レミが「一富士・二鷹・三なすび」の最後のなすびに思うこと/エプロン手帖

暮らし

公開日:2023/2/24

私の料理の原点は、やっぱり母の味でした――
エプロン手帖』(平野レミ:著、和田誠・舟橋全二:絵/ポプラ社)は、平野レミさんが、28年前に出した書籍を大幅にリニューアルしたエッセイ集です。51の食材にまつわるエッセイと、レミさん撮影によるお料理の写真、レシピがエッセイとともに楽しめます。料理を盛る器にこだわり、背景に夫の和田誠さんのポスターや自身のブラウスを敷くなど、スタイリングもご自身で手がけたそう。リニューアルした本書から、厳選した8つのエッセイとレシピをご覧ください。

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エプロン手帖
エプロン手帖』(平野レミ/ポプラ社)

一富士・二鷹・三なすび

 初夢で縁起がいい「一富士・二鷹・三なすび」という言葉を子どものころから知っていたけど、最後のなすびというのがよくわからなかった。富士山は美しい山だからわかる。鷹は強くてかっこいい鳥だからわかる。なすになると急に調子が狂うような気がした。実は今でもよくわからない。三トマトじゃいけないのかしら。

 お盆にもなすが登場する。なすに割箸で手足をつけて飾る。私の小さいころはどの家にもそういう習慣があったようだ。あれはなすを馬にして、ご先祖様が乗って帰るように、という気持ちなのだろう。最近までうちの近所のおばあさんが、家の前になすの馬を並べて送り火を焚いていたのを思い出す。その人が亡くなって、そういうほのぼのとした風景が見られなくなってしまった。

 なすは直火で焼いて、しょうが醬油で食べる、というのが素朴でおいしい。油で焼いてしょうが醬油、というのもいい。なすには油がしみやすいので、油にも合う。

 なすを焼いてからさいて、オリーブオイルを使ったドレッシングににんにくをきかせてその中に漬け、アンチョビ少々をちょんちょんとのっけて冷たいのを食べる。

 ラタトゥイユはフランス料理だけど、日本の夏野菜全員集合で作れる。なす、きゅうり、トマト、玉ねぎ、ピーマン、適当に切って、にんにくをきかせたオリーブオイルで炒め、水を使わずにコトコト煮て、塩胡椒して出来上り。冷やしてもおいしい。

 この夏野菜全員を炒め、最後にたっぷりのバターを加え、塩胡椒してスパゲッティにかけると、おいしい野菜スパゲッティになる。(次のページに続く

エプロン手帖
イラスト=舟橋全二

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