ヤバい新人が入ってきた!思ったことをすべて口に出しちゃう新入社員のオフィス奮闘コメディ!『大越春太郎は黙れない!』/マンガPOP横丁(76)

マンガ

公開日:2021/9/10

大越春太郎は黙れない!
『大越春太郎は黙れない!』(瀬田ヒナコ/双葉社)

 このコーナーで紹介した3つのマンガ作品が、先日発表された『次に来るマンガ大賞2021』のコミックス部門で見事TOP20に選出されてめちゃくちゃ嬉しい! 『うるわしの宵の月』のやまもり三香先生、『チ。-地球の運動について-』の魚豊先生、そして、『【推しの子】』の赤坂アカ先生と横槍メンゴ先生おめでとうございます! これを機にこの連載を読んでくれる人が増えてくれればなぁー……。ハッ! 今回紹介する作品に影響されて思わず本音が出てしまいました(本当か!?)

 とまぁ何も恐れず本音を言えちゃう人は、ちょっとした発言でも躊躇ってしまう自分にとって非常に羨ましい。もちろん言っていい“常識の限度”というものはあるけど。『大越春太郎は黙れない!』(瀬田ヒナコ/双葉社)の主人公・大越春太郎(おおごえはるたろう)は、そんな思ったことをすべて口に出してしまうクセを持った男。良くも悪くもその発言が周りに影響を与えていくオフィスコメディをご紹介!

advertisement

 とある人材派遣会社の新入社員のひとりで、真面目でちょっぴり不器用な仲市律子は出会ってしまった。とても大きな存在感の“非凡”な同期の人間と。彼の名は大越春太郎。それは初日の自己紹介から本領を発揮する。まず自分の個性的な部分として、「思ったことが全て口から出てしまうところ」というクセを発表。するとタイミング良く(悪く?)社長が横を通ると、絶対に触れてはいけない部分を大声で発したではないか! その発言に凍りつく職場と律子。これが春太郎の、そしてそれを見た律子の衝撃的な社会人デビューとなった。彼は過去にもこのような発言で何度か失敗をしているようだが、このクセは厳格な祖父の教えで確立されたとか。それが今や条件反射で思ったことがすぐ声となって出ちゃうのだそうだ。

 そんな春太郎の素直すぎるクセは、社内に大きな影響を及ぼすことになる。例えば、スケジュールを忘れないよう脳内ではなく声に出して反復する姿に、他の社員も自分も忘れないよう気を引き締めて確認するなど、社内の意識は少しずつ変わっていく。

 春太郎が社内を色々とかき回しながら過ぎていく研修期間の終了が迫り、同時に所属先が決定する。しかし、やはり春太郎の影響は大きく、選定は難航。しかしこの3カ月、一緒に頑張ってきた律子の救われる一言によって配属先が決定する。そこにはもちろん律子も一緒。これからも春太郎に巻き込まれること必至な律子と、そして春太郎自身の新社会人生活はどうなっていくのか。所属先での黙れないドタバタ業務がさらに賑やかになっていく奮闘コメディだ。

 春太郎の思わず言っちゃう一言は、決して失言ばかりではない。むしろ、これらの発言は春太郎の中で悪気は一切なく、どちらかと言うと人を褒めようとしている。結果失敗する方向へ行ってしまうことが多いが、これには春太郎の祖父の教えがキチンと入れ込まれている。それは「真っ直ぐな本音でぶつかれ」。そう、いつでもただ“真っ直ぐ”なだけなのだ。そんな春太郎の言葉は、声が大きいこともあって一言一言が非常に熱い! それによって誰かを勇気づける場面も。

 元気のない今の世の中、春太郎に勇気づけられる人はきっと多いはず! 彼の“迷言”と“名言”に踊らされてみてはいかが!?

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

あわせて読みたい