好みの表紙から本を選ぶ! “ジャケ買い”のススメーー黄色い表紙編

文芸・カルチャー

2019/11/1

 本との出会いは一期一会。何の気なしに本屋さんやネットで本を探していて、ふと出会ってしまう素敵な表紙の書籍。心をグッとつかまれたならそれは「買い」で間違いなし! 本稿では、ダ・ヴィンチニュース編集部がオススメする、“ジャケ買い”してハズレなしの作品のうち、黄色い表紙の作品をご紹介。

31歳で亡くなった梶井基次郎の『檸檬』 あ、丸善にレモンを置く話? 「桜の樹の下には屍体が埋まっている」で始まるあの話も収録

『檸檬 (280円文庫)』(梶井基次郎/角川春樹事務所)
『檸檬 (角川文庫)』(梶井基次郎/角川書店)
『檸檬 (新潮文庫)』(梶井基次郎/新潮社)

 読み返せば読み返すほど、さらに魅力が増していく本がある。特に教科書に載せられていた名作の数々は大人になってから読み返してこそ、じわじわとその魅力が感じられるものだ。その最たるものとして挙げたいのが、梶井基次郎の『檸檬』。「ああ、丸善に檸檬を置く話ね」と侮ってはいけない。ひとたび本を開けば、作者の感性に圧倒。作品の力に思わず魅せられてしまうことだろう。

『檸檬』の文庫版は梶井基次郎の短編集となっている。特に近年発刊された文庫の装丁はなんともオシャレ。見ているだけで清々しい気持ちになり、どの文庫で読もうかと悩んでしまうほどだ。そして、装丁に負けないほど、その内容もみずみずしく、青春の味わいがする。表題「檸檬」は、冒頭から、主人公が、憂鬱さ、不吉さに苛まれている物語。好きな音楽や詩にも癒されず、文具書店の丸善でも満たされない。借金取りに追われているし、身体の具合も芳しくない。そんな主人公は、寺町通の果物屋で見つけた檸檬によって、少し晴れやかな気持ちを取り戻していく。

夫の死に数日気づかず、悲しまなかったら大バッシング! 75歳・元女優を描いた直木賞候補作『マジカルグランマ』

『マジカルグランマ』(柚木麻子/朝日新聞出版)

 マジカルグランマ、と聞いてどんなおばあちゃんを想像するだろう。つやつやした白髪に、上品で知的な横顔? あるいはほんわかした微笑みをたたえ、なんでも受け止めてくれる包容力? そんな想像をした人は、すでに「思い込み」と「偏見」の罠に落ちている。柚木麻子さんの小説『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)を今すぐ読んだほうがいい。

 直木賞にもノミネートされた同作の主人公・正子は75歳。映画監督の夫と敷地内別居を続ける、元女優だ。自立のため、女優業に再び復帰すると決めたとき、助けになってくれたのが80歳を過ぎたベテラン女優・紀子だ。この、正子に的確なアドバイスをする紀子の冒頭の描写に、すでに著者から仕掛けられた罠がある。「なるほど、年齢なんてものともせず、今なお輝き続ける姉御肌の彼女が、正子を導く“マジカルグランマ”なのか」と、つい思ってしまうからだ。

人種差別発言をしてくる同級生とも親友になれる。大人の常識を軽く飛び越える子どもたちに落涙必至のノンフィクション!

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ/新潮社)

 多様な価値観を受け入れようだとか、個性を認め合おうだとか、文字で、あるいは声で届いてくることが増えた。グローバル化のメリット、そして少子化と人口減が進む日本のおかれた状況からのその必要性は理解できるが、不安感は払拭できない。文化の違いや貧富の差などから、同質ではない者同士が理解し合うことは難しい。それを、例えば他国の移民問題が物語っている。

 イギリスに住む、中学生の息子と日本人の母親との日々を綴るノンフィクション『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ/新潮社)は、グローバル化が進む世界の中でイギリスに今なお顕在する格差・階級社会や人種差別をリアルに描いている。著者は、本書に登場する母親。息子はアイルランド人の父親と日本人の著者から生まれた。

女の子がいろいろな未来を想像!? ヨシタケシンスケの最新絵本『それしか ないわけ ないでしょう』

『それしか ないわけ ないでしょう』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

 毎度毎度、想像もつかないような、それでいて幼いころに一度は考えたことがあるようなユーモアあふれる絵本で驚かせてくれる、ヨシタケシンスケさん。新刊が出れば必ず話題になり、子どもはもちろん大人まで虜にしてしまう。そんな彼の新しい絵本が『それしか ないわけ ないでしょう』(白泉社)だ。

 本作品は、主人公の女の子におにいちゃんが放った「みらいはたいへんなんだぜ」というひとことから始まる。それを聞いた女の子はショックを受け、おばあちゃんにそれを伝えに行く。

出会い系サイトでその人にぴったりの本をすすめる?! 現役書店員が贈る予測不能の実録私小説

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(花田菜々子/河出書房新社)

 本を読みたい、買いたいと思ったとき、私たちがとる行動といえば、本屋に行く、ネットで探す、雑誌や書評サイト等でおすすめの本を探す……大体こんなところだろう。でももし、本に関する膨大な知識を持つ“本の専門家”が、自分一人だけのために、自分に最もぴったりの本を紹介してくれるとしたら?

 そんな、想像したらかなり素敵なシチュエーションを、ネットを使って実践した人物がいる。『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出書房新社)の著者、花田菜々子さんだ。

三浦しをん節が大炸裂! 読むだけで「明日も楽しく生きよう!」と笑顔になれる、エッセイ最新作

『のっけから失礼します』(三浦しをん/集英社)

 世界は果てしない、と三浦しをんさんのエッセイを読むといつも思う。日常にこんな楽しいことがそうそう転がっているものかね?と思うくらい、変わった人や事件が転がっているけれど、実は、しをんさんの語る内容はたいてい、私たちが日常で遭遇してもおかしくないことばかりだ。まあ、最新作『のっけから失礼します』(集英社)にあるように、新幹線で某大臣経験者のSPと隣り合わせるなんてことはさすがにめったにないと思うが、それでも、同じ経験を私たちがしてもただ「ひゃー、すごいところに居合わせちゃった」で済ませてしまいそうなところを、しをんさんはつぶさに観察し、時におもしろおかしく、時に本質をついて語ってくれるのだ。世界を果てしなく広げ続けるか小さくつまらないものにおさめるか、それは人の視点次第なのだということが、エッセイを読んでいるとわかる。

 いかがだっただろうか。どの書籍の内容も、ダ・ヴィンチニュース編集部のお墨付き! 今日は黄色の気分、と思ったら、この中で気になった書籍を手にとってみてほしい。