灰塵の暦―満州国演義〈5〉
灰塵の暦―満州国演義〈5〉 / 感想・レビュー
レアル
2.26事件後から南京事件までが描かれたこの巻。同じ日本の歴史でも現代史になればなるほど日本が行ってきた行為に向き合うのが辛くなる。それは自分にとって身近な出来事として捉えられるのと、それに続く次なる歴史が決して明るい歴史ではないのを知っているからだ。暴走する軍、そして衝突と、この巻はまさに表題通り「灰塵の暦」。全9巻の中5巻を読み終え、歴史的にも佳境をむかえた感じもある。歴史認識の問題もあるが、日本が行ってきた行為に目を逸らすことなく次巻へ進みたい。
2015/06/11
キムチ27
文字通り、灰塵の時間が刻まれて行く。日中戦争がドンパチ繰り広げられている空の下で、種々の思惑やら権謀・商談・男女のもつれまで有象無象の出来事だらけ。4巻まで丹念に追い続けた話、5巻の中ばから、何故か頭の中に入ってこない。悪戯に文字を追うだけ・・何とか読了。手練にたけた胡娘に溺れる太郎、次郎は哲学的思惟の彷徨へ。三郎がこの当時の軍国エリートらしい歩み方をしているかも。四郎はややもすると等身とはいいかねる場面に置かれてばかり。難しい時局の捉え方、南京大虐殺の場面を読むのみでは語り足りない。
2015/01/01
KAZOO
2.26事件の決着からその後、内閣もころころと変わり、日中戦争へと突入していきます。それとは別に主人公のひとり、特に次男の動向がかなり大幅に書かれています。今まで寄り添ってきた従者(馬と犬)が死んでしまいいよいよ一人になってしまいます。船戸さんも結構下世話な話が好きですね。小沢征爾の父親のことを書いたり、その名前の由来を書かれています。
2014/06/26
いくら
二二六事件の清算と盧溝橋事件から日中戦争のはじまり、南京大虐殺と連なる第五巻。最初の三章は章末がすべて次郎のシーンで次郎ファンとしては嬉しいかぎり。ただそんな喜んでばかりはおられず、今回は辛い場面ばかりで、なんとも。そして巻末の酸鼻を極める南京大虐殺。破滅への曲がり角なのか。
2014/05/10
NAO
この巻では、敷島四郎が長兄太郎の噂を聞いて、「兄はいつも勿体つけて問題を先延ばしにしていた」と手厳しく評価している場面が印象的だった。四郎の言葉は、当時の日本を暗示しているようだ。次郎は、彼の自由の象徴とでもいうべき愛馬風神と愛犬猪八戒を失う。この喪失によって、次郎は心のよりどころを失くしてしまったように見えるのがちょっと気になる。日本の人口問題と、農村不況。この問題を解決するために満州移民という国策を取らざるを得なかった日本。この国の矛盾が、満州で大きく渦巻いている。
2015/07/08
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