過去の女を忘れられない男の未練を、バブル期の幻影とともに描いた新境地!『晩秋行』大沢在昌氏インタビュー
「新宿鮫」シリーズを筆頭に、ハードボイルド小説を通して男の生きざまを描いてきた大沢在昌さん。新作『晩秋行』(双葉社)では、過去の女を忘れられない男の姿を、バブル期の幻影とともに描き出している。
空前の好景気に浮かれていた時代、「土地ころがしの神様」と呼ばれた二見のもとで働いていた円堂。だが、やがてバブルは弾け、二見は多額の負債を抱えたまま行方をくらませてしまう。しかも、クラシックカー「フェラーリ250GTカリフォルニア・スパイダー」に、円堂の恋人だった君香を乗せて。
『晩秋行』(大沢在昌/双葉社)
それから約30年後、居酒屋店主へと転身した円堂のもとに、かつての盟友・中村から電話が入る。「赤のスパイダーを見た奴がいる」──サングラスの女が運転していたというその車は、二見のカリフォルニア・スパイダーか。そして、女の正体はかつての恋人・君香なのか。円堂は、目撃情報を頼りに那須に向かうが……。
20億円のクラシックカーをめぐる追走劇を描きつつ、女の面影を追う男の老境を描いた本作は、まさに大沢ハードボイルドの新境地。男の未練がましさ、情けなさをも描き切…