そして誰かがいなくなる (単行本)
「そして誰かがいなくなる (単行本)」のおすすめレビュー
現実とフィクションが混ざり合う… 下村敦史氏が自邸を舞台に書いた前代未聞の本格ミステリー
『そして誰かがいなくなる』(下村敦史/中央公論新社)
胸騒ぎがする。自らも謎めいた洋館に閉じ込められたような没入感。恐ろしさ。一体、これから何が起こるのだろうか。不安と期待を抱えながら、焦るようにページをめくった。
現実とフィクションが混じり合い、境界を見失っていく。そんなこの上ない体験をさせてくれるミステリーが、下村敦史さんによる最新作『そして誰かがいなくなる』(下村敦史/中央公論新社)だ。どうしてこのミステリーにこんなにも惹き込まれるのか。それは、この小説が、下村さんの自邸を舞台としているというのが大きな要因のひとつだろう。
下村さんの自邸は、いかにも何かが起こりそうな洋館。外観は、パルテノン神殿を思わせるドーリア式の白い飾り柱が特徴的で、玄関を入れば、吹き抜けのホールに、赤色のカーペットが敷かれた曲線状の階段、頭上には大きなシャンデリアが現れる。書斎はバロック様式、ゲストルームはロココ調、マスターベッドルームはヴィクトリアン調と、各部屋でコンセプトが異なり、そのどれもがこだわり満載。この小説では、そんな自邸を舞台に事件が巻き起こるのだ。
本…
2024/3/19
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『そして誰かがいなくなる』(下村敦史/中央公論新社)
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そして誰かがいなくなる (単行本) / 感想・レビュー
starbro
下村 敦史は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者の凄い家を舞台にした「そして誰もいなくなった」オマージュミステリでした。 https://www.univer-sys.com/atsushi-shimomura/ 著者の趣向が空回りしているので、著者が期待する程は注目されて売れることはなさそうだと思います(笑) よって建築資金は、あまり回収できません。 https://www.chuko.co.jp/tanko/2024/02/005744.html
2024/03/29
パトラッシュ
池袋の旧江戸川乱歩邸を見学した際、戦前に建てられた質素なままの姿に驚いた。その乱歩の名を冠した賞を受けた作家が、外観内装ともはるかに凝った自邸を舞台としたミステリを構築した。綾辻行人の館シリーズほどではないが、新築直後の自宅に驚くべき密室トリックの仕掛けを施すとは、オマージュ対象のクリスティーでも考えつかなかった夢を実現してみせた。しかもファンには常識であるクイーンの合作コンビをも、犯行計画に組み込んだのだから。ラスト1行に謎の失踪を遂げた乱歩賞作家とあるが、実際に失踪した藤本泉氏をイメージしているのか。
2024/03/12
いつでも母さん
ミステリー作家が皆こうだとは思わないが、下村さん凄い家を建てたのね~隠し部屋までって!(汗)自宅を舞台に名作のオマージュを提案されての本作は、私の苦手なクローズドサークルミステリー。はぁ、見事に翻弄されました(今回も)建築様式のお勉強もさせられた感じ。読了しても何だか騙された気がして、誰も信じられず、どこに本当があるのだろう・・が正直なところだ。
2024/03/16
しんたろー
下村さんの新作はミステリファンなら飛びつくか、無視するか微妙なタイトル…下村ファンでもある私は当然前者なので名作のオマージュ作品だと期待して読み始めたが、なかなか事件が起きないのがもどかしかった。章ごとに視点を変えたり、怪しい雰囲気を織り込んだりと工夫されているのでソコソコ面白く読めたが「人に勧めるレベルか?」と問われると言葉に詰まってしまう。エピローグと謝辞で「へ~え、そうなんだ!」と驚けたし、著者のミステリ愛も伝わってきたのは良かったが、そろそろ初期のような「熱い敦史」作品を我儘なファンとしては願う。
2024/04/18
ちょろこ
目を奪われる一冊。作家、編集者らが招かれたのは人気ミステリ作家の新築豪邸お披露目会。しかも次第に空模様は雪に。ついに豪雪に閉ざされてというお約束の展開。豪邸描写といい、雰囲気といい惹きこまれる要素がふんだんにあるのが良い。謎が謎を呼び、この中の誰かが…と、人間関係の雲行きも怪しくなってきてワクワクしたけれど、魅力的な登場人物がいなかった。一部想像がつく部分もあり、驚愕、してやられた感もさほど。謎解きよりも最後まで豪邸に目を奪われるミステリって感じかな。実際、こんな豪邸に住んで執筆されているのか。ふーん…。
2024/04/09
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