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しょうがの味は熱い

しょうがの味は熱い

しょうがの味は熱い

作家
綿矢りさ
出版社
文藝春秋
発売日
2012-12-12
ISBN
9784163878706
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しょうがの味は熱い / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

初出が「文学界」であったために、2篇の中篇小説になっているが、実態は連続した長編小説。物語は、奈世の語りを中心に展開するが、処々に絃の側からの語りが挿入される。試みとしてわからないでもないが、奈世一人の語りに徹した方が、もどかしさはより伝わっただろう。3年の同棲生活から結婚へというステップは、同棲を伴わない恋愛から結婚へというそれよりも遥かに大きな一歩なのではないだろうか。移行のタイミングを掴みにくいと思うのだ。まして、この小説の場合には、絃が自足しており、積極的な結婚の意思を持ってはいないのだから。

2015/04/26

さてさて

二人の感情の微妙なズレが最初から最後まで痛々しく伝わってくるこの作品。その両者の気持ちのズレを唯一知るのは読者である私たちだけ。でもそんな読者にはどうにもできないもどかしさにいらつく読書。第三者的立場から見た主人公二人のある意味での面倒くささとある意味でのばからしさ、そして真面目に思い悩む二人のドタバタを一種のエンタメとして楽しむ読書。「しょうがの味は熱い」。味を表現するのに『熱い』という形容詞を使う不思議感。そんな綿矢さんの絶妙な表現の数々と、主人公二人の痛々しさが同居する様を見る、そんな作品でした。

2021/03/30

hiro

綿矢さんの作品5冊目。文芸誌に掲載された時期が離れていたので、違う話が二編収録されていると思ったが、一篇目は同棲して半年目、二編目は同棲して三年目の奈世と絃の二人を描いた作品だった。奈世は行き詰っているし、一方の絃はよく綿矢さんの書く男性達と同じく、煮え切らない。一日で読める量だが、読んでいてイライラが募る作品だった。特に「上司に叱られ、正直辞めたい。また新しい職場ですべてをやり直し、自分に自信を持ちたい」と思う絃は、部下にも、娘の夫にも決して持ちたくない男だ。その後、こんな二人は、どうなったのだろうか?

2013/02/16

風眠

冒頭「整頓せずに詰め込んできた憂鬱が扉の留め金の弱っている戸棚からなだれて落ちてくるのは、きまって夕方だ。」の一文にしびれてしまった。あるあるという感じを、こんなにも美しい文章で表現できるなんて。表題作と『自然に、とてもスムーズに』の連作で、どちらも同棲している男女のズレを描いているが、ドラマチックな何かが起こるわけでもないし、お決まりのブチ切れもない。淡々とした文章と心理描写が、「煮え切らない男と、煮詰まった女」のリアルに迫っていく。くっついたり離れたりしているカップルって、多分こんな感じなんだろうな。

2013/11/10

とら

「整頓せずにつめ込んできた憂鬱が扉の留め金の弱っている戸棚からなだれ落ちてくるのは、きまって夕方だ」―本のまくらが相変わらず素晴らしい綿矢さん。冒頭から物語に惹き込まれる。独立してる話かと思ったら連作二篇だった。でも一冊で一つの話である事には変わりない。”結婚”なんてまだ分からないけど、「しょうが~」の時は奈世よりは絃の想いに賛同、「自然に~」の時はどちらの想いにも賛同だった。自分が考えるところに物語は進展していったので、一般的な結婚の考え方として正しい事を考えることが出来ていたのだなあと思った。結婚観。

2013/12/06

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