アンドロイドの「僕」は、とある国の施設に保護され、所有者「Mr.ナルセ」との日々を手紙に書くことに…【島本理生 私だけの所有者】/はじめての①
直木賞作家4人と、“小説を音楽にするユニット”YOASOBIがコラボレーション! 島本理生、辻村深月、宮部みゆき、森絵都による短編小説集『はじめての』をYOASOBIが楽曲化し、「文学」「音楽」そして「映像」から物語世界をつくりあげていく話題のプロジェクト。企画テーマ「はじめて」をモチーフに書かれた珠玉のアンソロジー『はじめての』から、各話の冒頭部分を全4回連載でお届けします。第1回は、“はじめて人を好きになったときに読む物語”、島本理生著「私だけの所有者」をご紹介します。
一通目の手紙 はじめまして。 そんな言葉を会ったこともない先生に使うのは、なんだか変な感じがしますね。 そもそも僕は誰かに手紙を書いたことなんて、この国に保護(それとも保管というべきでしょうか)されるまで、一度もありませんでした。だからもし文章が時々おかしなことになっていたら、それは本来の仕様ではなく経験不足によるものだと理解してもらえたら嬉しいです。 この国に輸送されて、三ヶ月間の保護観察期間が過ぎ、政府からの通達を読み終えた僕はまだ少し戸惑っています。なぜなら僕自身…