現役ヘルス嬢が語る「夜のマナー」「秘密道具」——性のお仕事漫画まとめ

アニメ・マンガ

2018/11/26

「性のお仕事」のことを、どのくらい知っているだろうか。ソープ、ヘルス、ピンクサロン、デリバリーヘルス…。主な業態としては、男性客がお金で女性からの性的サービスを買うというニュアンスが強い。

 客として行ったことのある男性は一定割合いそうだが、嬢として、経営者として、店舗スタッフとして、何らかの形で性産業と深い関りを持ったことのある人はどのくらいいるのだろうか。普段気になっても、深く知る機会の少ない「性のお仕事」の世界を描いたおすすめの漫画を、本稿では6作品ご紹介したい。

■行き場のない貧困女子が流れ着く先とは――『フルーツ宅配便』

『フルーツ宅配便』(鈴木良雄/小学館)は、現代社会で行き場のない「貧困女子」が流れ着く場所としてのデリバリーヘルスを描いた漫画だ。離婚して養育費を受け取れなかった、親の介護で離職してしまった…。そんな、誰もが陥るかもしれない人生の困難がリアルに描かれる。

 本書は生々しい現実を切り取った内容だが、激しい性描写は出てこない。そのため幅広い読者にとって読みやすく、そのぶん「貧困女子」の現実が刺さる。実は身近にあるのに、多くの人が目を向けたがらない「貧困と性産業」の関係性を切り取った作品だ。

■全国津々浦々。出張多きサラリーマンの、風俗店潜入体験記

 なまえを変えるには、嘘を言うには理由(ワケ)がある――。『匿名の彼女たち』(五十嵐健三/講談社)は、道玄坂、歌舞伎町、大塚といった都内屈指の風俗街から、栄、古町、青森、飛田といった地方の情緒ある色町、そして自宅まで…。数多の“嬢”との間に生まれる人間物語を紡いだ漫画だ。

 本書の主人公は中堅商社勤務の独身男、32歳。彼が日本全国の営業先で「嬢」と触れ合う、といったストーリー展開は、生々しいエロの香りに包まれながらも、ちょっぴり温かい。本書では全国津々浦々の風俗店が、良い点も悪い点も隠さず紹介されている。出張多き独身貴族の方には、ガイドブックとしても役立つかもしれない。

■地味な私が風俗嬢になったのは、ご主人様の命令でした――

『リアル風俗嬢日記 彼氏の命令でヘルス始めました』(Ω子/竹書房)は、「心も身体もすべて解放できる場所こそが風俗」という切り口で、風俗の実態をコミカルに描いた漫画。現役ヘルス嬢が語る、風俗講習、夜のマナー、秘密の道具まで…。笑って読みながらも、時たま深く考えさせられるコミックエッセイだ。

 ヘルスってどんな所?という素朴な疑問への答えから、「オジサンとレズプレイ」など、当事者でなければなかなか知り得ない驚愕の実話まで。そして、タイトルにもなっている、「地味な私が風俗嬢になった理由」も描かれている。

■デリヘル送迎ドライバーの目線で切り取る風俗の世界

『デリバリー』(usi/芳文社)の主人公は、デリヘルの美人ドライバー桜坂。むき出しの性欲と金銭欲の狭間で生きる風俗嬢たちを、ホテルまで運ぶのが彼女の仕事。フリーランスで風俗嬢を運んでいる彼女の眼には、風俗嬢、客、そして店はどう映るのか。ドライバーと嬢、狭い車内で繰り広げられる、立場の異なる「女」同士のやり取りがおもしろい。

 人間としての芯があり、洞察力の高い桜坂。嬢、客、経営者の間で日々発生するいざこざを、彼女がスッキリと解決していく様は爽快だ。風俗は社会のセーフティーネットなのか、それとも犠牲者を生み出す巣窟なのか…。そういった大きな議題にも言及するストーリーが胸に刺さる。

■さまざまな女の子がいて、様々な客がいて、様々な店があり、様々なプレイがある

 続いてこちらもデリヘルドライバーを主人公にした物語。『デリワゴン』(阿部定治:原作、伊野ナユタ:漫画/双葉社)の主人公ユキは、心優しきデリヘルのドライバー。様々な事情を抱えて懸命に働く女の子たちをワゴン車に乗せ、お客様が待つホテルへと送り届ける。

 様々な女の子がいて、様々な客がいて、様々な店があり、そして様々なプレイがある。日の当たらない場所で懸命に生きる人たちの、生々しい息遣いが感じられる作品だ。業界を知る人たちからも、そのリアルな描写に対する評価が高い。

■24年間、こんなにセックスについて考えたことはなかった

 愛とお金、客と私、彼氏と私の関係。フーゾク体験が私の何かを少しずつ変えていく――。『ラブ&マネー フーゾクで働いた私の恋』(安江アニ子:著、MAYU:原作/祥伝社)は、彼氏に嘘をついて風俗で働き始めた女性、須並(すなみ)あかねを主人公にした物語。

 勤めていたバイトを辞め、彼氏の部屋に転がりこんだあかねは、求人雑誌での「1日5万円保証」という広告に目がとまる。貯金がなく、借金も膨らんでいたあかねは彼氏に嘘をつき、フーゾクで働くことを決める。性の仕事を務める女性の葛藤や内面の変化の描写が精密で、「嬢側」の視点で風俗の世界をより一層知ることができる。

「性産業」と聞くとどこかアンダーグラウンドな雰囲気も感じてしまうが、今やその市場規模はかなりのもので、広い視野で社会を眺める上では看過できない業種だ。

「性のお仕事」は人権や貧困の問題と絡めて扱われることも多い。性産業の現状を非難する声は多く、しかし中にはそれを社会のセーフティーネットとして肯定的に捉える意見もある。この世界を様々な角度から深く知るために、上に挙げた漫画を手に取ってみてはいかがだろうか。

文=K(稲)