性被害、女性軽視、ルッキズム。あらゆる「わたし」が直面する生きづらさを露わにし、私小説の領域にも踏み込んだ西加奈子が織り上げる8つの物語『わたしに会いたい』
西加奈子さんの小説の魅力は、到底一言で言い表せるものではない。ただ、強いて1つ挙げるとするなら、「容赦のなさ」が抜きん出ている。本来であれば隠しておきたい本音、薄めて誤魔化したい現実。そういうものを、西さんは容赦なく原色のままに描ききる。新…
西加奈子さんの小説の魅力は、到底一言で言い表せるものではない。ただ、強いて1つ挙げるとするなら、「容赦のなさ」が抜きん出ている。本来であれば隠しておきたい本音、薄めて誤魔化したい現実。そういうものを、西さんは容赦なく原色のままに描ききる。新…
カナダで、がんになった――。直木賞作家・西加奈子氏の最新刊『くもをさがす』(河出書房新社)は、同国で乳がんとコロナに罹患した彼女によるノンフィクション作品だ。西氏いわく、心身が前に進むための手段として綴った手記だというが、これはいわゆる「闘…
「西加奈子」という作家の物語に、これまで幾度となく救われてきた。『さくら』にはじまり、『漁港の肉子ちゃん』、『iアイ』、『きりこについて』、『きいろいゾウ』、数え上げたらキリがない。一昨年に刊行された『夜が明ける』は、それこそ一晩中、夜が…
“僕の手には今、一枚の広告がある。 色の褪せたバナナの、陰鬱な黄色。折りたたみ自転車の、なんだか胡散臭いブルー。そして何かの肉の、その嫌らしい赤と、脂肪の濁った白。” 西加奈子氏による小説『さくら』(小学館)を読みはじめた時、冒頭の表現にガツ…
作家が経験したことのほぼそのままを書くスタイルの「私小説」(代表例は梶井基次郎作『檸檬』、田山花袋作『布団』など)は、20世紀初頭に確立しました。そしてSNS全盛の2020年代、経験したことをそのまま、ないしは多少の脚色を添えて(あるいは全くもって…
本屋大賞2022ノミネート! 直木賞受賞作『サラバ』から7年、若者の貧困、虐待、過重労働をテーマに、西加奈子氏が悩み苦しみ抜き、全力で書き尽くした渾身の一作。 《以下の記事は(2021年11月19日)の再配信記事です。掲載している情報は2021年11月時点のも…
『夜が明ける』(西加奈子/新潮社) この世知辛い世の中で、もっとも言葉にするのが難しいのは、「たすけて」という四文字だと思う。どんなに辛く苦しいことがあっても、「他の人はもっと頑張っている」「自分の努力が足りないだけ」…。そう思い込んで、「大…
※「第5回 レビュアー大賞」対象作品 「私自身、世界側の人間として、こうありたいということを、このタイミングで大声でめっちゃ叫んでみました」「ここに書いてあることは“今の世界”やから、ビビッドなうちに読んでもらえたらうれしいです」――これは、西加…