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中村ふみ

職業・肩書き
作家
ふりがな
なかむら・ふみ

プロフィール

最終更新 : 2020-02-06

秋田県生まれ。2010年『裏閻魔』で第1回ゴールデン・エレファント賞大賞を受賞し、デビュー。他の著作に、『魔女か天女か』『冬青寺奇譚帖』『なぞとき紙芝居』『夜見師』『死神憑きの浮世堂』『天下四国』シリーズなどがある。

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『黄昏出張所』(中村ふみ/KADOKAWA)

 灯りも持っていかれてしまったので、手探りで水を飲み、椀の中の粥を流し込んだ。空腹だったからか充分美味く感じた。

 格子の前に食器を置き、ハジメは這いつくばって奥の筵に戻った。土を固めただけの床よりは筵でもあった方がいい。両脇は板だが、奥だけは土壁のようだ。

 いったい何をされたのか、本当に体中が痛む。

 座ったまま膝の上に顔を乗せ、頭を抱え込んだ。そのとき初めて自分の頭が丁髷になっていることに気付く。その独特の手触りに絶望感が増した。

「……出られるのかな、オレ」

「ご心配なく。出られますよ」

 蟲番の声がして、ハジメは思い切りよく顔を上げた。いつの間に入って来たのか、確かに牢の中にあの男がいた。

「どういうことだよ、これ」

「臨時職員の業務…

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『黄昏出張所』(中村ふみ/KADOKAWA)

 胃の辺りがひどくむかむかしていた。

 肩は痛むし、指先は感覚がないし、背中が腫れている感覚がある。片目も腫れているのか、目蓋がうまく上がらない。

 状況を一つ一つ説明するとまだまだ長くなる。つまり全身の具合が悪いと言った方が早かった。

(暗いな)

 片目を開けてもあまり変わらなかった。閉じても開けても暗闇だった。たぶん仰向けになっている。一応屋内のようだが、それにしては寝心地が悪すぎた。布団の上でないことは間違いない。

 触れた手の感触からすると筵(むしろ)とか蓙(ござ)というものに近い気がする。屋内でこんなものの上に寝ているというのはどういう状況なのだろう。

 どこからか男たちの囁き声が聞こえてくるが、何を言っているのかまではわからなか…

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『黄昏出張所』(中村ふみ/KADOKAWA)

 公園の前に立つ。

 あの男は現れるのだろうか。空は夕焼けに染まり、黄昏が近づいて来る。朝見えたのはいったいなんだったのか。

(オレがおかしくなっているか、そうでもないのか)

 それがこれからはっきりする筈だ。

 果たして彼は実在するのだろうか。確かめようと思っていた。公園はまだ子供連れや老人や学生などが歩いている。黄昏までには減るだろう。

「お母さん、お腹すいた」

「晩ご飯はお父さんが帰ってきてからね」

 そんな会話をしながら母と子が公園から帰っていく。昨日と同じような風景だ。

(親なんて簡単に裏切るんだぞ)

 子供に教えてやりたかった。

 だが、きっとあの子の親は違うのだろう。人は親から生まれる。驚異的な偶然の産物。ならば、自分には他の人生など…

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『黄昏出張所』(中村ふみ/KADOKAWA)

 工事現場はよかった。

 ぼやぼやするなと怒鳴られることはあるが、たいていはその場限りだ。叱責や嫌みがいつまでも続くようなことはない。

 たまには褒められることも礼を言われることもある。缶コーヒーなんか奢ってもらったりもする。ここのおっちゃんたちの方が死んだ父よりずっと優しかった。

「遠野、仕事が丁寧になったな。明日も来ないか」

 現場監督からそんな声もかけてもらった。

「お願いします」

 この監督に当たったときはラッキーだ。日雇いの作業員にも公平に接してくれる。

 頼んだら正式に雇ってくれるかもしれない。だが、どこかでハジメにも躊躇いがあった。なんのために高い授業料を出して二年も情報処理を勉強したのかという気持ちがある。ハジメにもやってみた…

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『黄昏出張所』(中村ふみ/KADOKAWA)

「……村役場?」

 そんな印象を受けた。しかし、今どきは村役場だって窓ぐらいサッシになっているだろう。ガタガタの木の枠にガラス、窓ガラス越しに暗くなった夕焼けの空が見える。天井には簡素な笠がついているだけの電球がぶらさがっていた。

「前に座ってください」

 声の主はカウンターの向こうにいた。

 絵に描いたような七三の髪型をしていて、上にだけ黒い縁があるクラシックな眼鏡をしていた。白いワイシャツに地味なネクタイ、サスペンダーに黒い腕貫。遥か昭和の公務員のような印象を受けた。それでもすらりとしていて、やぼったい雰囲気はない。

「聞こえませんでしたか」

「あ……いえ、はい」

 よくわからないまま、ハジメは男の前の椅子に腰をかけた。

 カウンターの内側…

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『黄昏出張所』(中村ふみ/KADOKAWA)

(なんだよ……)

 仕事を紹介してくれるというので久しぶりに会ったのだ。向こうが悪事の共犯者を探していたとしても、ハジメも文句が言えた義理ではない。結局お互い利用しようとしただけだった。

 とぼとぼ歩いているうちに、空が青からうっすら赤みを帯びてきた。夕焼けが目に染みる。

 騙される側の人間――確かにそうだった。

「……変わりたい」

 自分で自分が厭だった。

 だから戸惑いながらも圭人の誘いに乗ってしまった。

 気がつくと公園の前にいた。遊んでいた子供たちも帰る時間になったらしく、何人か出てきた。

「おばあちゃん、アイス食べたい」

「はいはい、家に帰ってからね」

 そんな微笑ましい会話が聞こえてきた。

 残暑も終わりつつある九月の夕暮れ。幸せなおうち…

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『黄昏出張所』(中村ふみ/KADOKAWA)

prologue

 カサ──カサカサッと、微かに音がした。  蟲番はお茶の入った湯飲み茶碗を置き、小さく溜息をつく。  しばらく静かだったのだが、また活動期に入ったのだろうか。真ん中にぽつんと置かれた机の抽斗から望遠鏡を取り出すと席を立った。  書類の片付けを終えたかったが、なにしろ膨大だ。蟲番としての仕事の合間にやるしかない。愛用の万年筆と算盤だけが頼りで、〈IT化〉などというのは永遠にありえない。ここはそういう職場だった。  望遠鏡を使う前にかけていた眼鏡を外す。滅多に崩れることのない七三の髪を少し後ろに撫でつけた。几帳面に黒い腕貫の左右の高さを揃える。  窓の向こうは黄昏。窓を開けると、色や時代が混ざり合い、奥へ奥へとねじ曲…

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作家
中村ふみ
THORES柴本
出版社
講談社
発売日
2019-07-05
ISBN
9784065156537
作品情報を見る

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