平野レミの料理の出発点・レミの会とは――「熊は鮭をかついで帰る?」/エプロン手帖

暮らし

公開日:2023/2/18

私の料理の原点は、やっぱり母の味でした――
エプロン手帖』(平野レミ:著、和田誠・舟橋全二:絵/ポプラ社)は、平野レミさんが、28年前に出した書籍を大幅にリニューアルしたエッセイ集です。51の食材にまつわるエッセイと、レミさん撮影によるお料理の写真、レシピがエッセイとともに楽しめます。料理を盛る器にこだわり、背景に夫の和田誠さんのポスターや自身のブラウスを敷くなど、スタイリングもご自身で手がけたそう。リニューアルした本書から、厳選した8つのエッセイとレシピをご覧ください。

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エプロン手帖
エプロン手帖』(平野レミ:著、和田誠・舟橋全二:絵/ポプラ社)

熊は鮭をかついで帰る?

 私の父が書いた『レミは生きている』という本がある。そのレミは私の名前じゃなくて、『家なき子』の主人公の名前。アメリカ人の祖父が、ミックスの父を「レミ」と呼んだ。父は戦後、差別されていたミックスの子どもたちを大勢家に招いて「レミの会」と名づけた。大勢の子どもたちに母が料理を作り、それを手伝ったのが、私の料理の出発点だった。

 父の子どものころとレミの会のことを書いたのが『レミは生きている』で、その後その本をもとにしてラジオのドキュメンタリー番組が作られ、賞を取った。制作が北海道放送だったので、記念に大きな木彫りの熊が父に贈られた。その熊が玄関に飾られていたから、小学生のころからその熊はおなじみだった。

 その熊は鮭を口にくわえている。熊が鮭をとるということを、それで知った。夫の話ではとったたくさんの鮭を熊が笹に通してかついで帰るという。熊は笹の先を結ぶことを知らないから、鮭は一尾ずつ落ちてゆく。山の中で人がその鮭を拾って食べるという。本当かしら。

 子どものころから鮭缶が大好きで、中に入っている骨がとりわけ好きだった。かたそうなのに口に入れるとホロホロくずれる感触がたまらない。カルシウムがいっぱいだから、最近ではその骨のところだけ缶詰になっている。(次のページに続く

エプロン手帖
イラスト=舟橋全二

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