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夜果つるところ

夜果つるところ

夜果つるところ

作家
恩田陸
出版社
集英社
発売日
2023-06-26
ISBN
9784087714319
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「夜果つるところ」のおすすめレビュー

【2カ月連続刊行】恩田陸が生み出すメタフィクション!美しくも惨烈な至高の幻想小説

『夜果つるところ』(恩田陸/集英社)

 おびただしい血が流れ、累々と死者を積み上げていくというのに、どうしてこの物語はこんなにも美しいのだろう。人は、禍々しいものに自然と引き寄せられてしまう生き物なのだろうか。冴えざえとした月の光と、まどろむ獣のような不穏な気配。この世のものではないものが跋扈し、さまざまな人間模様が交錯する館。終わらない夜の中で一体何が起きようとしているのか、誰だってその様子を覗き込まずにはいられないだろう。

 そう思わされたのは、『夜果つるところ』(集英社)。恩田陸氏が「本格的にメタフィクションをやってみたい」と書き上げた幻想小説であり、執筆期間15年のミステリ・ロマン大作『鈍色幻視行』(集英社)に登場する作中作だ。『鈍色幻視行』では、この作品は、謎多き作家・飯合梓の唯一の著作であり、幾度となく映像化が試みられながらも、撮影中の事故によりそれが頓挫している“呪われた”小説とされている。そして、これを題材に作品を書きたいという小説家が関係者たちへの取材を通してその謎に迫ろうとするのが『鈍色幻視行』のあらすじ。「多くの人を虜にする幻の…

2023/6/26

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『夜果つるところ』(恩田陸/集英社)

 2023年6月26日、恩田陸の小説『夜果つるところ』(集英社)が発売された。同作は今年5月に発売されたミステリー・ロマン大作『鈍色幻視行』(集英社)の作中に登場する小説である。著者の「本格的にメタフィクションをやってみたい」という思いから実現した今回の作中小説“完全単行本化”企画は、早くも読書家の間で大きな話題になっているようだ。

『夜果つるところ』は、謎多き作家「飯合梓」によって執筆された幻の小説。これまで何度か映像化の話も出ていた人気作なのだが、いつも撮影中に何らかのアクシデントに見舞われ、計画が頓挫してきた。ある時は撮影のセットが燃え上がる事故が起こり、またある時は撮影中にカメラマンが急逝…。いつしか同作は、“呪われた小説”と呼ばれることに。

『鈍色幻視行』では、そんな『夜果つるところ』にまつわる謎を解き明かすべく参加した、関係者が集うクルーズ旅行での出来事が描かれている。

『鈍色幻視行』(恩田陸/集英社)

 そして肝心の『夜果つるところ』だが、同作で描かれているのは遊廓「墜月荘」で暮らす“私”の物語。主人…

2023/8/1

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夜果つるところ / 感想・レビュー

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starbro

続いて“呪われた”小説『夜果つるところ』、作中作メタフィクション、リバーシブルカバー、恩田 陸&飯合 梓のWネーム、W奥付で遊び心満載です。しかしながら撮影中の事故により三たび映像化が頓挫する程の作品の魅力&怖さは感じられず、思わせぶり、少し企画倒れで終わった感じがしました。 https://lp.shueisha.co.jp/ondariku/

2023/07/08

パトラッシュ

恩田さんはホラー色の強い「館物」とリアル傾斜のミステリ系を書き分ける作家であり、前者の典型である本作を後者系列の『鈍色幻視行』の作中作とするには、あまりに雰囲気が違いすぎる。謎の男たちが集まって陰謀や暗殺が繰り広げられる墜月荘の描写もよく、館物としては非常に面白く読めたが、果たして他作品の一部とする意味があるのか。そもそも主人公ビイちゃんが実は大正天皇の隠し子だったとの設定では、右翼を憚って映像化に乗り気になる会社があるとは思えない。『鈍色』の一部という扱いでなく、独立した小説として楽しんだ方がよかった。

2023/07/18

R

奇譚といっていい不思議なお話だった。メタ的には小説内小説なんだそうだが、純粋にこれ単体で大正時代にさもありそうな不可思議がつまっていて面白かった。物語ではあるんだが、その内容と言葉選びがよくて、情景描写の美しさ、娼館、ロシア皇帝の末裔、心中騒ぎ、軍人、幻視等々、オカルト的な雰囲気が淫靡さももっていて、ともかく雰囲気がいい。話の中身としては、まぁそういうことがあってもと思うようなそれなんだけども、退廃の真似事めいた雰囲気とでもいうような、その不一致みたいなのが面白かった。

2023/11/11

のぶ

本作を読んで「鈍色幻視行」の空白部分が埋まったような気がする。こちらの方は昭和のある時期を舞台にしたダークファンタジー小説だなという気がした。はじめは平たんに見えるストーリーで、これは「鈍色幻視行」で読んで思っていたものと印象が違うなと感じたのが本音。こんな作品になんで皆踊らされているのかと。ただこの飯合梓が唯一世に出した作品は単独で読むと、面白みに欠けるし、つながりの分からない部分も多い。あくまで「鈍色幻視行」の作中作として読むにとどめた方がいい。二作を合わせ恩田ワールドが出来上がったのだと思う。

2023/07/15

KAZOO

恩田さんの「鈍色幻視行」に出てくる映画の原作にあたる本で、そこに出てくる原作者がいるような感じの体裁になっています。話はある幼女の視点から墜月荘という遊郭のような場所で起きるそれこそ幻想的な話で、時代としては2.26事件前の話という設定のようです。場面や時代性からするとかなり手ごわいかと思いましたが区切りが比較的短いので読みやすい話でした。

2024/03/06

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