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spring (単行本 --)

spring (単行本 --)

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作家
恩田陸
出版社
筑摩書房
発売日
2024-03-22
ISBN
9784480805164
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「spring (単行本 --)」のおすすめレビュー

ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、恩田陸『spring』

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年5月号からの転載になります。

『spring』

●あらすじ● 「あたしはずっと春ちゃんの存在に戦慄し続けている。」その名に一万もの春を持つ、萬春。8歳でバレエを始めた彼は、15歳で海を渡り、天才バレエダンサーかつ、天才振付家として世界に名を轟かせていく。切磋琢磨を続けるダンサー仲間やバレエの世界へ彼を導いた恩師たち、そしてともに作品を作り上げた作曲家が語る、萬春とはいったい何者なのか。構想・執筆に10年をかけた、待望のバレエ長編小説。

おんだ・りく●1964年、宮城県生まれ。92年、『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と第2回本屋大賞、06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞、17年『蜜蜂と遠雷』で直木賞と第14回本屋大賞を受賞。

恩田陸筑摩書房 1980円(税込) 写真=首藤幹夫

編集部寸評  

ビフォーアフターで語られる絶対的な春物語 1万年前の日本列島は縄文時代で、萬春とはそういう名。彼は舞踊の…

2024/4/6

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構想・執筆10年、恩田陸が描く渾身のバレエ小説。唯一無二の舞踊家にして振付家の少年をめぐる4つの物語

『spring』(恩田陸/筑摩書房)

 私がはじめて物語の人物に恋をしたのは、サン=テグジュペリ氏による『星の王子さま』を読んだ時だった。詩的な言葉を奏でる王子さまに、子ども心に強く惹かれた。だが、恩田陸氏の新著『spring』(筑摩書房)を読了後、これまで経験したことのない強い感情を抱いた。これこそが“恋”なのだと、そう断言したいほどには、主人公の存在が私の内側を占拠している。

 本書は、著者が構想・執筆に10年を費やした渾身のバレエ小説である。全4章にわたるストーリーにおいて、それぞれ異なる人物が1人の人間を物語る。唯一無二の舞踊家にして、振付家でもある萬春(よろず はる)。彼の成長とほとばしる才能を、彼の叔父やバレエ仲間たちがそれぞれの視点から回想する。全章通して緻密かつ繊細な描写に魅了されるが、最終章の威力は特に圧巻である。最終章の語りは「踊り」と同一で、生そのものが躍動するエネルギーが細部からにじみ出ていた。

“面白い踊りは、それが抽象世界であれ、具象的なものであれ、そこに現れる景色が「生きて」いる。風が吹き、木々が揺れ、人々の感情が、情念が…

2024/3/31

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バレエを踊ること、観ることで人生を祝福してもらえる感覚になる『spring』恩田陸インタビュー

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年5月号からの転載です。

 『チョコレートコスモス』では演劇、『蜜蜂と遠雷』では音楽(ピアノ)。小説家の恩田陸は、人間が身体を駆使して行うライブ芸術の魅力や魔力と、真正面から向き合う長編作品を約10年に一度のペースで発表してきた。その最新のトライアルとなる長編『spring』の題材は、バレエだ。

取材・文=吉田大助 写真=冨永智子

「舞台鑑賞は趣味なんですが、これまでは演劇がメインで、バレエを観るようになったのはここ10年ぐらいです。ミュージカルから入っていってコンテンポラリーを観るようになり、最後にクラシックバレエに辿り着いたんです。ちょうどその頃、編集の方から“次はバレエの小説はどうですか?”と声をかけていただきました。確かに、演劇、音楽と書いてきてさらにもう一つハードルを上げるとしたらバレエかな、と。書くのが難しいだろうと思ったからこそ選んだんですが……大変でした」 演出振付家、舞踊家の金森穣へのインタビューが、最初の取材となった。 「金森さんは理論家で、ダンスについての言葉をたくさん持っている方です。…

2024/4/7

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spring (単行本 --) / 感想・レビュー

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パトラッシュ

HALは天才バレエダンサーであると同時に、周囲を惹きつけてやまない巨大な光源であり鏡だった。誰もが振り返る輝きを放つ彼に、最高の姿で映りたいと願ってやまない。だからダンサーは自分を最高に表現する形として彼に振付を頼むが、己も知らなかった新たな側面を映されて戦慄してしまうのだ。HALに接した平地の民は、彼が天高く舞い上がるのに引きずられて才能を飛翔させていく。芸術家の孤独が描かれた従来型とは逆に、バレエという共通言語を持つ狭い世界故に成立する、集団としての芸術家の成長を主題とした新たな教養小説となっている。

2024/04/23

のぶ

「チョコレートコスモス」「蜜蜂と遠雷」の系列の作品だと聞いていたので、期待して読んだが満たされた。目で見て耳で聞いて空気を感じて、体験する芸術的な体験をどうしてこうも美しく魅力的かつ奥深く「文章」に出来るのか。文章なんて言ってしまえばただの文字なのに、読み出せばそこには音楽や躍動と美しさが溢れる深淵なバレエの世界が広がっている。バレエの天才の物語という要素は存分に生かされているし、恩田さんの持つ文学、映画、音楽等の詳細な情報が存分に込められていて、その知識の深さを読むだけでも十分に満足させられた。

2024/04/16

もぐもぐ

多分凄いんだろうなと思って読んだけど、想像超えて物凄かった。天才たちの饗宴に魅了されました。バレエの舞踏家としても振付家としても稀有な輝きを見せる春。HAL。ライバルと鎬を削るという張り詰めた雰囲気じゃなく、仲間たちと創造し世界を拡張していく景色、孤高なのに孤独じゃないというのがなんとも心地良かったです。本当に舞台を見てきたような不思議な余韻も気持ちいい。初版限定特典の掌編『反省と改善』は9/30までの公開。こちらもクスッと楽しい話でした。

2024/03/23

ぼっちゃん

【202405ダ・ヴィンチのプラチナ本】『チョコレートコスモス』『蜜蜂と遠雷』と表現者を描いてこられた恩田さんが今回はバレエを描かれた作品。『蜜蜂と遠雷』の時にも思ったが、相当勉強してバレエの音楽、振り付けを理解して自分のものにしないと文章で表現できないと思うので本当に恩田さんは凄い!!。ただ前作2作品と比べ、この後どうなるのだろうと思うワクワク感は少なめだったかな。

2024/03/24

PEN-F

本編については一切の文句の付けようがないほどの完璧な内容でした。それとは別に特筆すべき点が1つ。パラパラ漫画のクオリティーの高さが凄い!450ページほどの本編の左下隅に描かれているパラパラ漫画が凄すぎる。バレエダンサーの踊りを表現しているのですが、その描写が滑らかすぎて、何度も何度もパラパラパラパラしてしまいました。跳んだり跳ねたり回ったり、一連の動きを飽きもせずに繰り返してしまうくらいに癖になる。たとえ本編を読まなくともこのパラパラ漫画だけでも購入する価値がある一冊。

2024/04/17

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