バレエを踊ること、観ることで人生を祝福してもらえる感覚になる『spring』恩田陸インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年5月号からの転載です。
『チョコレートコスモス』では演劇、『蜜蜂と遠雷』では音楽(ピアノ)。小説家の恩田陸は、人間が身体を駆使して行うライブ芸術の魅力や魔力と、真正面から向き合う長編作品を約10年に一度のペースで発表してきた。その最新のトライアルとなる長編『spring』の題材は、バレエだ。
取材・文=吉田大助 写真=冨永智子
「舞台鑑賞は趣味なんですが、これまでは演劇がメインで、バレエを観るようになったのはここ10年ぐらいです。ミュージカルから入っていってコンテンポラリーを観るようになり、最後にクラシックバレエに辿り着いたんです。ちょうどその頃、編集の方から“次はバレエの小説はどうですか?”と声をかけていただきました。確かに、演劇、音楽と書いてきてさらにもう一つハードルを上げるとしたらバレエかな、と。書くのが難しいだろうと思ったからこそ選んだんですが……大変でした」 演出振付家、舞踊家の金森穣へのインタビューが、最初の取材となった。 「金森さんは理論家で、ダンスについての言葉をたくさん持っている方です。…