3回フラれても椎太のことが好きでたまらない高校生の由舞。4回目の告白を「もうがまんできない!」【森絵都 ヒカリノタネ】/はじめての④
直木賞作家4人と、“小説を音楽にするユニット”YOASOBIがコラボレーション! 島本理生、辻村深月、宮部みゆき、森絵都による短編小説集『はじめての』をYOASOBIが楽曲化し、「文学」「音楽」そして「映像」から物語世界をつくりあげていく話題のプロジェクト。企画テーマ「はじめて」をモチーフに書かれた珠玉のアンソロジー『はじめての』から、各話の冒頭部分を全4回連載でお届けします。第4回は、“はじめて告白したときに読む物語”、森絵都著「ヒカリノタネ」をご紹介します。
取り返しのつかないものを取り返す。 そのために私は旅立った。 目のくらむほど遠い彼方への旅。 私の思いを、もう一度、彼にとって初めてのものとするために。 彼への思いを、もう一度、私にとって初めてのものとするために。 * 「ヒグチ、助けて」 その夜、何かがあふれた。夕食後、自分の部屋で柿ピーをぼりぼり貪っているうちに、私は急にいてもたってもいられなくなって、小学校からの親友に電話をした。 「私、やっぱり椎太が好きだ」 ヒグチのリアクションは薄かった。 「知ってるよ。もう耳に…