「それでも人間か」事件報道は他人の不幸を娯楽にするだけ? 事件記者が見出す答えは――
『事件持ち』(伊兼源太郎/KADOKAWA)
『地検のS』『巨悪』『ブラックリスト』など、骨太な社会派ミステリーで知られる作家・伊兼源太郎の最新刊『事件持ち』(KADOKAWA)は、千葉県北西部で発生した連続殺人事件を追う若い新聞記者と県警捜査一課の刑事、ふたりを主人公にした長編作品だ。
“事件持ち”とは、自分の持ち場でやたらと大きな事件が発生する記者を表す新聞業界用語。報日新聞入社2年目の永尾哲平は、周囲からそんな“事件持ち”だといわれている事件記者だ。この物語は、永尾が“署回り”で千葉県警津田沼署に詰めていたときに、谷津干潟で他殺体が発見されるところから始まる。3日前にはその現場から直線距離で1キロと離れていない船橋でも殺人事件が起きていた。両事件とも殺害手口はロープ状のものによる絞殺。遺体の手の指が切断されているという奇妙な共通点があり、さらにふたりの被害者は小中学校の同級生であることも判明。千葉県警は同一犯による連続殺人事件として合同捜査本部を設置する。
永尾は谷津干潟の現場近くで近隣住民への取材を進めていたときに、偶然、被害者たちと同級生…